2013年6月29日土曜日

東京都教育委員会、特定の日本史教科書使わないよう通知。 「二重検定おかしい」都立高教師ら反発。

YAHOOニュース
<都教委>特定の日本史教科書使わないよう通知
毎日新聞 6月27日(木)15時1分配信

東京都教育委員会は27日の定例会で、高校で使う特定の日本史教科書に国旗国歌法に関して不適切な記述があるとして、各都立高に「使用はふさわしくない」とする通知を出すことを決めた。高校の教科書は各校長が選定して都道府県教委に報告することになっており、選定に教委が事実上の介入をするのは極めて異例。通知に強制力はないが、都教委は「指摘した教科書を選定した場合は、最終的に都教委が不採択とすることもあり得る」としている。

都教委が問題視しているのは、実教出版の「日本史A」と、来年度向けに改訂された「日本史B」。国旗国歌について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記載している。

都教委は2003年、学校行事で日の丸に向かい君が代を斉唱することを通達で義務付け、従わない職員は懲戒処分にする厳しい対応を取ってきた。最高裁は11年、起立斉唱の職務命令を合憲と判断したが、12年の判決では「減給や停職には慎重な考慮が必要」との判断も示している。

実教出版の日本史Aには11年度の検定で「政府は国旗掲揚、国歌斉唱などを強制するものではないことを国会審議で明らかにした。しかし現実はそうなっていない」との記述に文部科学省の意見がつき、後半を「公務員への強制の動き」などと書き換えて合格。文科省によると、日本史Aの全国シェアは約14%という。

だが、都教委は昨年3月以降、各校に電話で「都教委の考えと合わない」と伝え、13年度の教科書に選定しないよう要求。採択の最終判断は都教委ができることもあり、この教科書を選定した高校はなかった。

14年度から使う教科書を決める昨年度の検定では、同じ記述がある日本史Bも合格。都教委は不使用を徹底するため、今回は文書で通知することにしたという。都教委幹部は「『公務員への強制』という表現は明らかに間違っており、採用するわけにはいかない」と話している。

実教出版は「そうした決定が出たとすれば大変残念だ」とコメントした。【和田浩幸、佐々木洋】


東京新聞
二重検定おかしい」都立高教師ら反発 実教出版日本史    
2013年6月28日 朝刊

東京都教育委員会が、実教出版の高校日本史教科書について「都教委の考え方と異なる」と指摘し、都立校で使用すべきではないとの見解を示した問題。国の検定を通った特定教科書を名指しで排除する異例の手法に、教育現場などから怒りや反発の声が上がった。(中山高志)

都教委が二十七日の定例会で議決した見解は、今年の教科書採択の対象となる実教出版の教科書「高校日本史A」「高校日本史B」について「国旗国歌をめぐる『自治体で強制の動きがある』という記述が、都教委の考え方と異なる」と問題視。「都立高校などで使用することは適切でない」と結論づけた。

「現場の教師が生徒の実情に合わせ教科書を選ぶ慣行が、都教委により踏みにじられた。納得できない」。都立高校で日本史を教える男性教諭(57)は同日午後、都教委の方針に声を震わせた。

勤務校は二年生で日本史Aを教えており、ことしの採択では実教版も選択肢に含まれる。校内ではすでに、都教委の意向を先取りするように、実教版に難色を示す声が出ているといい「さらにこんな見解が出れば、実教版を選ぶのは至難の業」と嘆息する。

「『この教科書は使うな』というやり方が横行すれば、やがては『この教科書しか使うな』という国定教科書のような制度にもなりかねない」。男性教諭は強く危惧する。

同様に都立高校で日本史を教える鈴木敏夫さん(64)も「国が検定を通し事実と認めた記述を都教委が否定し、その教科書を使わせないのは『二重検定』に当たる」と批判する。

実教出版の編集責任者は「事実であれば大変残念」と言うにとどめたが、出版労連教科書対策部の吉田典裕部長(54)は「憲法が保障する出版の自由の侵害」と強く反発する。

一方、都教委高校教育指導課の江本敏男課長は「各校で教科書選定作業を適切にやってもらうことが狙い。採択権を持つ都教委が、採択の具体的な考え方を示すことはあり得る」と説明している。

教科書は、使用する前年にそれぞれの高校が選び、その報告を基に教委が採択する。教委は通常、高校については学校の選択を尊重して追認している。

都教委が「不適切」とした二つの教科書のうち「日本史A」は昨年も採択対象だった。都教委は都立二百三十三校のうち、採択に当たる十七校に「実教版は都教委の考え方とは相いれない」などと非公式に連絡し、結果として全校が実教版以外を選択した。もう一冊の「日本史B」も対象に含まれる今年は、都教委が昨年より露骨に踏み込んで公の見解を出した形で、採択にかかわる都立校は延べ百九十四校に上る。

◆教委の職権乱用
高嶋伸欣琉球大名誉教授(社会科教育)の話 教科書検定を通った記述が、自らを批判する内容になっているからといって、選定をやめるよう通知するのは教育委員会の権限を越えている。見解の相違があるなら、選定した高校に対し誤解のない指導をするよう伝えればよく、職権乱用だ。昨年は高校に電話で懸念を伝えたが、メンツのために正式な通知にしたのではないか。高校の教科書は無償ではなく、家庭が負担するので、不適切な採択方法に異議を申し立てる保護者もいるかもしれない。

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