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介護・医療・年金で負担増…「平成の姥捨て法案」始動
2013年10月17日 掲載
<貧乏な年寄りは死ねということ>
政府がいよいよ弱者イジメの改悪法案の成立に向けて本格的に動き出した。臨時国会に提出された「社会保障制度改革プログラム法案」のことである。法案の趣旨は、あくまで「社会保障制度改革の全体像やスケジュールを決めるもの」だが、その中身はどれも国民にとっては見過ごせない負担増ばかりだ。
法案は、社会保障制度改革国民会議の審議結果を踏まえて閣議決定された「骨子」を具体化した。「個人の自助努力を喚起する仕組みを導入」をスローガンに掲げ、介護・医療・年金などの分野で、これまでの「互助」や「扶養」からの大転換を図っている。
中でも影響が大きいのは「介護分野」だ。全国で約150万人いる「要支援1、2」(一部に助けが必要な人)の保険サービスを見直し、15年度中に市町村事業に「切り離す」のだ。
「政府は『市町村が地域の実情に応じ、柔軟かつ効率的なサービスを提供できる』などと説明しているが、要は『国ではもう面倒見ないから自治体でお願い』という押し付け以外の何物でもありません。市町村事業になれば財源やマンパワーなどで地域間格差が出る可能性もある。結局、家庭でやってくれとなる恐れは強いのです」(厚労省担当記者)
「要支援」の“切り離し”に成功すれば、次は「要介護」だ。国の介護負担削減の“本命”とみられているのは「要介護」で、これも市町村に押し付けられる公算は大だ。実際、今回の法案では、「中重度の人に手厚くする」なんて名目で軽度の「要介護1、2」の高齢者を特別養護老人ホームから締め出そうとしている。所得に応じて自己負担率を1割から2割に引き上げる案の検討も進んでおり、4年後ぐらいには金持ち以外はロクな介護サービスを受けられないなんて事態もあり得るのだ。
70~74歳の自己負担率を来春、1割から2割に引き上げることを目指している「医療分野」も無視できない。消費税率が5%から8%にアップするタイミングだから、対象となる高齢者は大打撃だ。
「70~74歳の自己負担は法律上は2割ですが、選挙対策の特例措置として1割に軽減してきました。それを2割に戻す内容です。不満続出を恐れた政府は対象者を来年度に70歳になった人からとする“マヤカシ策”を考えた。それでも猶予は1年だけです」(前出の厚労省担当記者)
<麻生副総理の“本音”が現実化>
「年金分野」も狙われている。今回は具体策まで踏み込んでいないものの、支給開始年齢の引き上げなどについて「必要な措置を講じる」としている。負担増は確実だ。
すでに厚生年金は今年度から支給開始が61歳に引き上げられた一方、保険料率は2017年9月まで18.3%に上がり続けることになっている。それでもまだ足りないというのだ。全日本年金者組合の田中寛治氏はこう言う。
「全額を社会保障費に回すと言った消費増税分はどこに消えたのか。税金は上がり、医療費負担が増えるばかりでは、病気になっても医者にかかれず、介護サービスを利用することもできない。高齢者は極貧生活にまっしぐらです」
麻生副総理は今年初めの社会保障制度改革国民会議で、高齢者の終末医療について「いいかげん死にたいと思っても『生きられますから』なんて生かされたんじゃ、かなわない。さっさと死ねるようにしてもらわないと」と思わず“本音”を漏らしていた。それを実現する法案が、今回の法案。トシを取ってもカネがなければ介護サービスを受けられず、病院にもかかれず、年金も手にできない。貧乏な年寄りは死ねということ。まさに「平成の姥捨て法」なのだ。
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