岐阜新聞 社説 2013年11月 8日(金)
特定秘密審議入り
法案素通りは許されない
特定秘密保護法案が衆院本会議で審議入りした。一足先に衆院を通過した日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設関連法案の審議でも特定秘密の公開ルールをめぐり野党と政府との間で前哨戦が繰り広げられた。自民党はホームページで特定秘密に当たる情報の具体例を挙げて「今よりも秘密の範囲が広がることはない」と強調する。
「国民の『知る権利』や『報道・取材の自由』への配慮が明記されており、いずれも損なわれる心配はない」。さらに「特定秘密の情報が他国で公開された場合、その指定を解除する」「報道業務の従事者にはフリーランスの記者も含まれる」とも言う。しかし、どんなに聞き心地のいい言葉を連ねても、この法案の根っこは変わらない。
それは、重い処罰をちらつかせながら、メディアや市民運動から国会、司法に至るまで外部チェックのすべてを排除し、官僚主導で情報を支配することだ。誰はばかることなく、違法秘密や疑似秘密(自らの保身のための秘密)を特定秘密に指定して半永久的に抱え込んだり、ひそかに廃棄したりすることもできる。
秘密保全は必ず暴走する。戦前・戦中の歴史の教えるところだ。同じ過ちを繰り返さないためには、どうすればいいか。その疑問を残したまま、法案を素通りさせることなど決して許されない。それを肝に銘じ、各党は審議に臨んでほしい。
重い処罰に取材源である公務員らが萎縮し、メディアも二の足を踏むようなら、知る権利は後退を余儀なくされる。新聞協会や市民団体、有識者らが次々に反対声明を出した。審議入りに際し気になるのは、国会議員の反応が鈍いことだ。国政調査権や日常的な議員活動を縛りかねない法案になぜ反発の声が広がらないのか理解に苦しむ。
国会は国権の最高機関で行政を監督する立場にあるが、法案は特定秘密を提供できる先を秘密会に限定。しかも「知る者の範囲を制限」「目的外に使用しない」などの枠をはめ「行政機関の長が、安全保障に著しい支障を及ぼす恐れがないと認めたとき」という条件まで付けている。行政の裁量があまりに大きい。
特定秘密を知った議員が故意に漏らすと、最高5年の懲役(過失だと、最高1年の禁錮)を科す。党に持ち帰り協議することはできない。秘書に調査を命じたり、有識者に意見を求めたりすることも許されない。たとえ、すべての条件をクリアしたとしても、行政機関の長の判断一つで提供を拒否できる仕組みだ。
法案の骨格を整えた有識者会議は、特定 秘密をめぐる議員の守秘義務について「立法府の在り方の根 幹に関わるから、立法府に委ねることが適当」と指摘していたが、そんな配慮は法案にかけらも反映されていない。
行政の独走は司法との関係にも及ぶ。外務省機密漏えい事件の最高裁決定は、刑罰で守るに値する実質を備えた秘密かどうか判定するのは行政機関ではなく裁判所だという司法判断を示した。だが政府側は特定秘密漏えい事件が起きたときは「外形立証」で対応する方針を打ち出している。
秘密そのものを裁判所に提出せず、代わりに秘密指定が適切に行われたことなどを立証するやり方だ。ケースにもよるが、裁判官は中身を精査できず、被告の防御権も制約される恐れがある。
0 件のコメント:
コメントを投稿