2014年4月10日木曜日

安保をただす 自民党の論議 理屈まで強引ではないか (信濃毎日新聞) : 「法治国家のトップが自ら法秩序を崩そうとしているようなものである。禁じ手だらけの行使容認を止めなくてはならない。」

信濃毎日新聞
安保をただす 自民党の論議 理屈まで強引ではないか
04月03日(木)

 無理が通れば道理が引っ込んでくれるとでも思っているのか。

 憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に向けた自民党の論議である。

 安倍晋三首相の直属機関として安全保障法制整備推進本部が立ち上がった。初回の会議では顧問の高村正彦副総裁が、憲法が許すとされる「必要最小限度の自衛権」に集団的自衛権の一部が含まれるとの考えを示した。

 引き合いに出したのが砂川事件をめぐる1959年の最高裁判決だ。国の存立のために必要な自衛権は認められるとした。判決が個別的、集団的を区別していないことから、集団的自衛権も含まれると主張したいようだ。

 砂川事件は米軍の日本駐留が違憲かどうかが焦点となった事件で、集団的自衛権が直接問題になったわけではない。判決は個別的自衛権を前提にしたものと指摘する学者もいる。公明党からも「無理筋」との批判が出ている。

 憲法解釈の見直しに反対する国民は多い。その声を無視し、自民党は首相のごり押しに協力するのか。こんな姿勢では国民政党とは呼べなくなる。

 政府は自民党の議論に先立ち、集団的自衛権の行使を限定的に容認する案をまとめた。

 当初は自衛隊の活動範囲に地理的な制約は設けない考えだった。慎重姿勢を崩さない公明に配慮し、日本領域と公海上に限定し、他国領域への派遣は認めない方向で検討しているようだ。

 憲法解釈の変更を閣議決定する際には、自衛隊の活動範囲や行使の具体例を明記しない方針ともいわれ、なし崩しで活動が拡大していく懸念は消えない。

 高村氏は弁護士で法相や外相などを歴任している。砂川判決を持ち出したのは今後の党内論議で行使容認にお墨付きを与えるのが狙いとみられる。が、政府が憲法解釈で行使を禁じたのは81年のことだ。それより20年も前の判決に依拠するのは理解し難い。

 集団的自衛権に関する報告書をまとめる有識者懇談会や憲法解釈を担う内閣法制局長官など、首相は行使容認に前向きな人物ばかりを選んできた。さらに、強引な理屈付けを行ってまで容認に踏み切ろうというのか。

 法治国家のトップが自ら法秩序を崩そうとしているようなものである。禁じ手だらけの行使容認を止めなくてはならない。



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