2023年7月10日月曜日

〈藤原定家の時代418〉元久2(1205)年12月1日~30日 定家の子為家(8)元服 「天晴レ、月明シ。無為成就、幸甚幸甚。」(『明月記』) 

 


〈藤原定家の時代417〉元久2(1205)年10月2日~11月30日 延暦寺諸堂焼失 「大略放火か。」(「明月記」) 藤原実宗(定家の妻の父)内大臣 定家の娘(因子)、後鳥羽院に出仕(女房として仕える)、のち民部卿局 より続く

元久2(1205)年

12月1日

・今日籠居。(『明月記』)

12月2日

・定家、後鳥羽院の高陽院御所移徒に供奉

12月3日

・定家、八条院仏名に参仕

12月4日

・定家、為家と日吉社に参詣

巳の時、雪を凌ぎて京を出づ。為家と共に、日吉社の宮廻り。夜、通夜。吉夢を見る。(『明月記』)

12月5日

・定家、兼実の仏事に参仕

閑山の雪を凌ぎて帰り着く。すなわち束帯して、良経の許に参ず。(『明月記』)

12月7日

・定家、院より『源氏物語』以下の物語の中の和歌を書いて進上するよう命じられ、有家とともに和歌の優れた物語名を書き出して進上

院より召しあり。未の時許りに馳せ参ず。復日によりなお束帯す。清範を以て仰せられていう。物語の中の歌、書き進むべしと(源氏以下なり)。有家とこの事を承る。ただし、荒況極まりなし。よって粗々歌の事よろしきの名物語を書き出し、奏覧を経。これら書くべき由、仰せ事あり。有家と共に、良経の許に参じ、夕に退下。(『明月記』)

12月8日

・心神よろしからざるにより、籠居。(『明月記』)

12月9日

・定家、妻の父実宗の任内大臣拝賀に供奉、前駆を勤める。父の晴れ姿を娘である妻にも見せるべく、妻の見物車を供の者を付けて用意する。「英華の亜相二人(公継・公房)軒を連ね、見(現)任の両卿(公経・公定)は子息である。繁昌殊勝」と、誇らしげに日記に記す。

12月11日

・家長示し送りて云う。内の北面、名謁にすみやかに参るべき由、御気色。事の次でに相触る。即ち勅許を披露すと云々。恩免に於ては尤も本望と為す。(「明月記」)

定家は、後鳥羽院の院司源家長から名謁に参るべしとの院の御気色(御意向)を知らされたあと、「事の次でにあなたの望みを院に伝えたところ即座にお話しがありましたよ」と伝えられた。その望みは、息子三名(みみよう、為家)の元服のために院の衣裳を借用することで、それを家長を通じて申し入れていた。"

12月12日

・院より、物語の歌について定家と有家に仰せあり

院に参ず。出でおわします。見参して退出するの間、家長召し返す。物語の歌、有家と両人に仰す。仰せを承りて退出す。(『明月記』)

12月14日

・定家、左足で針を踏み、悪化を恐れる。

12月15日

・定家の子為家(8)元服(於、祖父実宗邸)。加冠内大臣西園寺実宗、理髪右中将藤原公雅。

「天晴レ、月明シ。無為成就、幸甚幸甚。」(『明月記』)

この日定家は、為家に水干を着せて実宗邸に向い、まず水干から直衣(のうし、良経の直衣)と奴袴(後鳥羽院の袴)に改めさせる。ついで実宗の近習蔵人盛親が、為家を寝殿西南の出居(でい)に設けられた儀式の場に連れて行く。定家や公定なども着座して見守るなか、右中将公雅が理髪し、実宗が髪搔(こうがい)で額を掻き加冠を行なった。膳物なども整え、全てが終わり為家を連れて退出。冷泉に帰った後、夜には院に借りた衣帽子(烏帽子)を為家に着させている。

為家の装束は、定家は後鳥羽院に元服のための装束を借りる手はずを整えており、奴袴と衣帽子の借用を許されている。良経からも直衣を借りている。上の身分の人の衣を元服の際に身につけると縁起が良いとされていたとはいえ、8歳の為家には大き過ぎた。定家の望みは叶い、「恩免に於ては尤も本望となす」と喜んでいる。「加冠〔大臣殿〕、理髪〔右中将〕、親王博陸の儀か。好運の然らしむるなり。過分の面目と謂うべし」。

12月17日

・風病により、出仕せず。(『明月記』)

12月18日

・定家、為家を伴い後鳥羽院・良経・良経室に参り、次いで宜秋門院・八条院にも参らせる

巳の時、為家相具し、院に参ず。女房を相具し、御所に参ぜらる。芳心の詞あり。ついで良経の許に参じ、見参に入る。又北政所の方に参じて退出す。八条院、宜秋門院に参ず。八条院より白梅の狩衣、紫の指貫・紅梅の衣二領、紅の下袴を賜う。(『明月記』)

12月19日

・定家、後鳥羽院女房越中内侍を見舞う。方違行幸に供奉

12月22日

・定家、東宮仏名に参仕

12月23日

・定家、八条院の美福門院月忌仏事に参仕

12月29日

・定家、日吉社に参籠。夢に歌一首を聞く。翌日帰京。

12月30日

・日吉社に通夜。夢の中に歌を聞く。

かすみたつかりばのをのれまれまれになごしなごしの春のあけぼの

今夜殊に男女の事を思ひて、この事あり。(『明月記』)



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