2012年11月18日日曜日
日本人の中国に対するイメージが80年前に回帰しているそうだ。
日本人の中国に対するイメージが80年前に回帰しているそうだ。
「朝日新聞」11月13日(夕刊)より転載させて戴く。
(段落、改行を施す)
<転載>
(見出し)
日中問題 80年前に教訓
対中イメージ30年代回帰論
「自分は正しい」 衝突招く構図
日本人が対話呼びかけるとき
日本人の中国に対するイメージが80年前に回帰している。
そんな論考を歴史研究者の劉傑(リュウジェ)早稲田大教授(近代日中関係史)が発表した。
日本が戦争に突入していった「1930年代」を足がかりに、日中間の歴史問題に光を当て直す試みだ。
劉は1962年生まれ。北京外国語大から東京大へ進んだ経歴を持つ。
今回、雑誌「外交」15号に論考を寄せ、「国際ルールを守らない自己中心的な国」という中国イメージが日本人の間で広がっている、と指摘した。
論拠は、日本の言論NPOと中国メディアの中国日報社が今春行った日中共同世論調査だ。
日本人の「中国に対する印象」は「良くない」が84・3%で、2005年の調査開始以来、最悪だった。
理由で最も多いのが「資源やエネルギーの確保で自己中心的に見えるから」(54・4%)。
「尖閣諸島を巡り対立が続いているから」(48・4%)、「国際的なルールと異なる行動をするから」(4 8・3%)と続く(複数回答)。
「漁船衝突事件の印象が直接的には大きいが、知的所有権や食品安全の問題も影響している。
経済大国化で中国が資本社会のルールに触れる機会が増えてきたためだ」と劉は話す。
論考では、国際ルールを守らない国という中国イメージは「満州事変(1931年)の時期の中国イメージと重なる」とも記した。
当時、日本は日露戦争後にロシアから南満州鉄道などの権益を譲渡されていたが、「主権を取り戻そうとする中国の主張と、条約や法を盾に権益を守ろうとする日本の主張が衝突」する火種になっていた。
日本のメディアなどが中国を批判する際に用いた論理が”中国は条約や国際義務を順守しない国だ”だった。
「帝国主義の時代、日本側は、条約を用いて権益を拡大する行為は問題ないとした。だが独立国家を望む中国人から見れば、圧力を背景に結ばれた取り決めは正義や道徳に欠けるものだった」
イメージは「回帰」をするばかりではない。
80年前には中国人が日本に対して持っていた「覇権国家」のイメージを、今では日本人が中国に対して抱いている、そんな反転現象もある、と劉は語る。
相手を「ルールを守らない国」と見なすことに、どんな「副作用」があるのか。
劉はこう話す。
「間違っているのは相手で自分は正しいとの考えが強まると、寛容さの働く余地が減る。優越感や相手への侮蔑意識も入り込みやすくなる。30年代の歴史が教えるのは、そうした構図のもとでは衝突が起こりやすいということです」
日中の経済力が逆転した時代の平和に30年代の歴史を生かそうとする言論も、論壇で見え始めた。
前防衛大学校長の五百旗頭真(日本政治外交史)は、中国国民に向けた寄稿「中国よ、戦前日本の道を歩む勿れ」の中で一つの「お願い」を書いた(国分良成編『中国は、いま』(2011年)所収)。
軍事力増強とナショナリズムで世界に不安を与え、孤立し、その状態から生じる危機感に押されてますます軍事力とナショナリズムに向かう・・・そんな悪循環に中国は陥らないでほしい。それは「一九三〇年代の日本のシナリオ」だったのだから、と。
現代中国政治が専門の高原明生東京大教授も今月、「(戦争に突き進んだ日本の)歴史を鑑とし、その経験を共有しようと中国の人々に呼びかけることができるのもまた、日本社会に生きる市民のなしうることであろう」と記した(「世界」12月号)。
先の世論調査で、東アジアの海洋で中国と日本の軍事紛争がいずれ「起きる」と思う人は日本では27・2%、中国では50・2%だった。
日本政府が尖闇の「国有化」を決める前の数字である。(塩倉裕)
<転載おわり>
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