2013年2月22日金曜日

忌野清志郎『瀕死の双六問屋』を読む(その6) 「クリエイティブな奴とそうでない奴。人には2種類あるんだと思う。人に使われてる人と自分で作り出す人だ。君はどっちが楽だと思う?」

北の丸公園 マンサク 2013-02-21
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忌野清志郎『瀕死の双六問屋』を読む(その6)

自分を大切にするが故の孤独、
と楽天性、
とポジティブな行き方。

第三十一話 君は水道を出しっぱなしにしたまま行ってしまった
 ものすごく寒い日が続いている。
一年のうちで最も寒い季節とはいえ、これはあんまりだ。
TVの天気予報などは”平年並み”などと能天気なことを言っている。
あいつらは能天気予報だ。
人々は心の底から冷え切っている。
2000年と上っ面で浮かれてみたところでむなしさがつのるばかりだ。
ずっと雪が降り積もっている。
高価なエアコンからは冷たい風が吹いてくる。
冷凍食品は解凍しようと努力すればする程カチンカチンに凍っていく。
今や、ミニ・スカート・ドレスを着る女は一人もいない。
肩のはだけたシャギー・ドレスさえ着用しようとは思わない。
つまらない忘年会のようなパーティーばかりがくり広げられている。
いよいよこの世の終わりだ。
みんなが回顧主義的な気分にひたっている。
とっくの昔に死んでしまったヒーローをまつり上げている。
淋しい限りだがその淋しさには気付いてもいない。
気付いていてもそれを公言する程の勇気も持ち合わせていない。
生活に追われた奴らがせいぜいだ。
悲しいことだ。

・・・。人々はつまらないことで喜一憂して、くだらない物に興味をひかれてしまう。
真実なんて言葉はすでに死語になってしまったんだ。・・・

 君は水道を出しっぱなしにして行ってしまった。
蛇口を開けっぱなしにしたまま。
それ以来、水道は流れっぱなしだ。
そうさ、僕の目からだよ。
つまり涙が止まらないってことさ。
君は僕の涙を出しっぱなしにして去って行ってしまった。
あの日からずっとこの涙は止まらないんだ。
この涙を止めに帰って来てくれよ。
ずっと待ってる。

 俺は新しいバンドをやるんだ。
ご機嫌なメンバーが見つかったんだ。
ミニ・スカートの踊り子がたくさん出てきてバンドの後ろで踊るんだ、なーんて、それは無いけどよ。
それはサイコーのブルース・バンドで毎晩、人々を楽しませるのき。
人々に希望と生きる勇気を与えるんだ。
そして次の街へと旅立つ時、見送る人は誰もいない。
なぜなら人々はもう希望と勇気を手に入れたので人生が充実して小さなバンドを見送る暇などなくなってしまったのさ。
俺達がこの寒い季節をぶっとばしてやる!

第三十二話 元気を出してねと、よく女に言われるけれど

第三十三話 月の砂漠より謎の譜面を

第三十四話 ちょっと待ちねえ、これを聴きねえ
 ・・・。くだらない事で一喜一憂してるのが人類というものだ。
僕もそんなものに真剣に取り組んでるときも多々あるが、時々お茶を濁したくなるのさ。
ヘソまがりとか目立ちたがりというのではなくて、自然にそんな気持になってしまうんだ。
「何を言ってんだ。くだらねえ」って思ってしまったりね・・・。
そんな俺のことを人々は大人になれない奴だとか変人だとか色々な評価を与えてくれたり、二度とつき合ってくれなくなったりする。
でも、気にすることもないさ。
ちっぽけな事だ。
音楽はずっと鳴ってる。・・・

 俺はドアを蹴って外に出た。
外はふぶきだ。
今年の一番冷える夜だった。
何てこった、寒すぎる。
あったかい会議室でイビキでもかいてりや良かったな。
コンビニでおでんかなんか買ってもどろうかな、「さっきはびっくりした? どー? みんな食べない?」なんて言ってさ、とも考えたがやめとこう。
あんな奴らはもううんざりだ。
俺は一人でだって生きて行けるだろう、たぶん。
曲を作って歌ってりや何とかなるだろうさ、たぶんな。

 とぼとぼ歩くうちにだんだん清々しい気分になってきた。
ガキの頃のそれとは比べものにもならないが、大人としてはなかなかちょっとこれは清々しい。
久しぶりに味わう気分だ。
俺は歩きながら自然と顔がほころんできていた。
冷たい空気の中を一人笑顔で歩いていた。

 この文を読んでも「何かあったんですか。心配です」とか「元気を出して下さい」などと言う手紙はよこさないで欲しい。
近況を書いてるわけではなく、フィクションの中のメンタルな感じなんだよ。
まあ、自分なりの独り善がりの文学のようなものさ。
ロックン・ロールなんて、つまり安っぽい文庫本、ペーパーバックみたいなもんだな。
誰の心にも残らなかったり残ったりするのさ。
それでいいじゃないか。
この世に悪が栄えたためしはないのなら、怠慢が栄えたためしもないだろう。
腐ったレコード会社はいつまで存続するのだろうか。
インターネットとかで曲が買えるようになってもレコード会社の存在価値はあるのだろうか。
あの、いばってる奴らは早く居なくなって欲しいよ。
何もわかってないくせに偉そうにしてるなんて、そんなみっともないことはない。
みんな同じ人間でこの国の国民でこの星の住人なのにさ。

第三十五話 ロス・アンジェルスから愛を込めて
 ・・・。でも世の中は変わってないぜ。
ミレニアムだかミディアムレアだか知らないが人間が決めたことだ。
ここからここまでが100年で---とか勝手に決めたことさ。
いちいちうかれてる場合じゃない。
つき合ってはいられないね。
世の中は変わってないどころか悪くなってんだ。
どんどんくだらなくなっていってる。
音楽もTVもどんどん低能になっていってる。
殺人も犯罪も短絡的になってる。
警察は庶民を守ってはくれなくった。
レコード会社のほとんどの社員は音楽を知らない。
社長も雇われだ。
雑誌もそうだ。
広告を載せないと取材もしてくれない。
誰も本当のことを言わなくなってしまった。
利権やせこい金で心を閉ざしちまったのさ。
おもしろいお国柄だ。
誰も騒がない。
みんな静かにしてる。
とても静かな夜だ。
あっ、ごめんね、ちょっとうるさかったかな? 
なんか、いつも僕は同じような事を書いてるな。
まあ、それもいいだろ? 
30年間同じような事を歌ってきたんだから。

第三十六話 俺のことは早く忘れてくれ

第三十七話 昨日、天国から天使がここにやって来た


第三十八話 毎日がとても退屈だったから俺はインディーズに走った
 ・・・。クリエイティブな奴とそうでない奴。
人には2種類あるんだと思う。
人に使われてる人と自分で作り出す人だ。
君はどっちが楽だと思う?


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