2013年4月14日日曜日

TPP 「何やっているんだ。あのタイミングで参加表明した意味がなくなるじゃないか。」 米側は、焦る日本の足元を見透かし、事前協議では妥協を許さなかった。

東京新聞
米に足元見透かされ 「あのタイミングで表明 意味なくなる」    
2013年4月13日 朝刊

十二日決着したTPP交渉参加に向けた日米事前協議。この日の合意は、早い時期の交渉参加にこだわった安倍晋三首相の意思による部分が大きいが、決着を急ぐあまり日本は交渉の過程で米側に譲りに譲った。日本は正式な交渉参加を前に高い「入場料」を払った。 (TPP取材班)

TPP交渉参加を表明してから十日ほどたった先月二十六日。首相官邸で外務省の河相周夫次官らから、なかなか前進しない協議の経過と今後の見通しについて説明を受けていた首相の表情は、見る見るこわばった。

「何やっているんだ。あのタイミングで参加表明した意味がなくなるじゃないか。大使でも誰でも相手国と話ができるじゃないか」。いつになく厳しい首相の言葉に、空気が凍り付いた。首相はオバマ米大統領と直接渡り合い、TPP交渉参加へ道筋をつけた自負がある。その後も、高い国内の支持を背景に、自民党反対派の抵抗を封じ込め、三月十五日に交渉参加表明した。

TPP交渉参加国は、年内の合意を目指している。後発の日本は少しでも早く交渉に加わらなければ、ルールづくりが不利になる。今年の交渉会合は三、五、九、十月。さらに七月にも会合が行われる方向となっている。首相は七月からの参加を目指し、そこから逆算して政治日程を組み立てた。

米政府は、新規の通商交渉開始では九十日前に米議会に通知しなければならない「九十日ルール」がある。七月参加のためには遅くとも四月中旬には米国との事前協議をまとめて議会通知を終える必要がある。

だが、首相の思惑とは裏腹に、米国との事前協議はなかなか進まなかった。一時は四月二十日からのTPP閣僚級会合まで米国を含めた各国の承認が遅れるとの情報もあり「このままでは七月から交渉参加できない」(首相周辺)と官邸内に焦りが浮かんだ。

米側は、焦る日本の足元を見透かし、事前協議では妥協を許さなかった。一方、日本側は、首相の意向を受け、協議で有利な条件を勝ち取るよりも早期決着を目指すことを重視。結果として事実上、自動車や保険で民主党政権当時から突きつけられていた「言い値」のまま要求を丸のみせざるを得なかった。

日本側が求めた農産品の関税維持は、本交渉での協議に先送りされる。合意を受け首相は十二日、記者団に対し「日本の国益は守られている。本番はこれからだ」と断言した。だが、米国との通商交渉に携わった経験のある国会議員は「事前協議で譲歩させられ、本交渉で日本の主張を反映させることができるのか」とつぶやいた。




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