2013年6月9日日曜日

オー・ヘンリー「賢者の贈り物」 「現実に目を転じれば不況下の「負の連鎖」か、不機嫌な社会が長く列島を覆う。「景気に薄日」の実感はなく、所得が増えない中、食品の値上がりなど負担だけが重くなる」

茨城新聞
いばらき春秋 2013年6月9日(日)

アパートに若い夫婦が住んでいた。あすはXマス。妻の手元には、買い物でまけさせ浮かせた「1ドル87セント。それで全部だった」。夫は立派な形見の金時計を持っている。妻は金時計の鎖をプレゼントにしたいと髪を売る

▼夫はXマスの朝、妻の喜ぶ顔を見たい。そのために大事な時計を手放し、妻の豊かな髪に似合う櫛(くし)を買う

▼一見愚かな行き違いはしかし、最も賢明な行為だった。貧しい2人は「まごころ」という贈り物を交換し合ったのだから。オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」

▼心温まる話は本の中だけ。現実に目を転じれば不況下の「負の連鎖」か、不機嫌な社会が長く列島を覆う。「景気に薄日」の実感はなく、所得が増えない中、食品の値上がりなど負担だけが重くなる

▼首相は今秋、消費税を引き上げるかどうか最終判断する。庶民の懐に手を入れる前に経済を立て直し、「無駄を削って身を切る改革」の約束を果たす。判断はそれから、が筋だろう

▼原発再稼働、TPPとアクセルを踏み続ける首相だが、時に、慎重にブレーキを踏むことも肝要。庶民に、増税という「まごころ」とかけ離れた贈り物を押しつけ、景況好転を台無しにし「愚者」となりませぬよう。(庄)

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