東京新聞
首相 原発推進を強調 被爆地で不信増幅
2013年8月7日 朝刊
安倍晋三首相が六日、被爆地・広島での被爆者との面談で、原発政策を推進する考えを表明した。世論の反対が強い原発再稼働や原発輸出だが、首相には前提条件である安全性を、日本の技術は満たすことができるとの過信がある。被爆地での表明は信頼を得るどころか、不信感を増幅させたといえる。 (城島建治、宮尾幹成)
東京電力福島第一原発事故の教訓は、原発を完全にコントロールできないということ。事故が起きれば、放射能が拡散し、甚大な被害が出る。事故から二年半たった今も、十五万人が避難生活を余儀なくされている現実が物語っている。
民主党政権の菅直人、野田佳彦の両首相(いずれも当時)は原発事故後、広島の「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」で「脱原発依存」を目指す考えをそれぞれ表明した。福島の原発事故の反省があったからだ。
だが、安倍首相はその広島で、原発を推進する姿勢を重ねて鮮明にした。被災地では除染も進んでいないのに、首相の言葉をうのみにする人はいないだろう。
広島は、同じ核の後遺症に苦しみ続けている。安倍首相は式典で原爆症の未認定患者を早期に救済する考えを表明し、被爆者に寄り添う姿勢は示している。
ただ、原発を再稼働することは、事故のリスクと表裏一体。首相は原発について「安全性を確保する」と強調しつつ、国会などでは「絶対安全はない」と認めるという自己矛盾から目を背けている。
被爆者側「原発廃止を」 首相、推進を強調
2013年8月6日 夕刊
広島市の平和記念式典に参列した安倍晋三首相は六日午前、市内で被爆者の代表七人と面談した。代表の一人が脱原発を求めたのに対し、首相は「原発の今後の位置付けについては安全性確保が最優先という方針を原則とする」と指摘。その上で「エネルギーの安定供給とコスト低減という観点も含め責任あるエネルギー政策を構築していく」と、再稼働など原発を維持・推進する考えを強調した。
首相は原発の再稼働や海外輸出を積極的に進める姿勢を明確にしてきたが被爆者の要請に対し言及するのは異例だ。広島県労働組合会議被爆者団体連絡協議会の中谷悦子さんが二〇一一年の東京電力福島第一原発事故に関して「危険性にかんがみ、すべての原発を廃止してほしい」と要請したのに対し答えた。
面談に先立ち、首相は平和記念式典であいさつしたが、原発政策には言及しなかった。
福島原発事故後の一一年の式典で、民主党の菅直人首相(当時)は「『原発に依存しない社会』を目指す」と宣言。一二年の式典でも野田佳彦首相(同)は脱原発の方針を維持する考えを示した。
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