2014年1月9日木曜日

生活保護2000人の家賃、暴力団に流れる (読売新聞) : 市の担当者は「暴力団から部屋を借りていることが明白でも、生活困窮者の住居を確保するという住宅扶助の目的は達成されており、対応の取りようがない」と話す。

読売新聞
生活保護2000人の家賃、暴力団に流れる

 大阪市内のマンション約70棟に住む生活保護受給者計約2000人に対し、市から保護費として支給されている住宅扶助費が、暴力団が経営していると認定された不動産会社に流れていることがわかった。同社は、各部屋を所有者から借りたうえで受給者にまた貸しし、家賃として受け取る住宅扶助費と所有者への賃料との差額で年約2億円の利益を得ているという。市や大阪府警は「違法性がなく、手が出せない」とするが、事実上、公金が暴力団に渡る構図だけに、専門家は「暴力団排除の流れに逆行する」と対策の必要性を指摘する。

 府警や市によると、同社は同市西成区にあり、同社や関連会社名義で借りたマンションの部屋を受給者にまた貸しする事業を約4年前から展開。入居した受給者は毎月、住宅扶助費などとして支給される4万円余を同社側に家賃として支払い、同社側は所有者に払う賃料との差額で、1部屋で月数千円の利益を得ている。

 こうした実態は、府警が昨年10月、受給者からウソの家賃保証名目で5万円をだまし取ったとして、同社の経営方針などに決定権を持つ男(47)を詐欺容疑で逮捕し、判明した。男は同11月に不起訴となり、大阪地検は処分理由を明らかにしていないが、男が調べに「山口組系暴力団組員」と認めたため、府警は組員に認定。同社についても「暴力団が経営している」と断定した。

 男は現在、別の詐欺罪で公判中だが、保釈されているため、経営を主導する立場に変わりはなく、保護費が同社側に流れる状況もそのまま続いている。

 この状態について、市の担当者は「暴力団から部屋を借りていることが明白でも、生活困窮者の住居を確保するという住宅扶助の目的は達成されており、対応の取りようがない」と話す。

 暴力団への利益供与を禁じた大阪府暴力団排除条例を所管する府警も「市や受給者の行為を条例違反には問えない」とする。理由は、市については、保護費が直接は同社側に支払われていないため、受給者についても、生活上の必要があると判断されるためという。

 読売新聞は同社に取材を申し込んでいるが、8日現在、回答はない。

建設・金融業界で暴力団排除の動き進む
 暴力団の排除を巡っては、2011年までに全都道府県で利益供与を禁じた条例が施行され、建設や金融など各業界でも関係遮断への取り組みが進む。警察庁によると、昨年6月までに民間事業者らに利益供与などを禁じる勧告や指導が行われたのは141件に上った。

 公共工事では全都道府県とほぼ全ての市区町村が、暴力団が関与する会社との契約を解除したり、入札参加を禁じたりする制度を導入。金融業界でも昨年、みずほ銀行が組員らとの取引を放置していた問題を受け、反社会的勢力に関する情報共有の強化に乗り出した。

 一方、兵庫県では昨秋、暴力団と、暴力団に用心棒代を払っているとされる露店との関係を断つため、県警が神社と協力して露店を管理する全国初の試みを始めている。

可能な対策は・・・部屋所有者に契約解除働きかけ
 本当に対策は取れないのか。専門家の一人は、大阪市と大阪府警が各部屋の所有者に対し、暴力団との契約を無効にできる排除条項を活用して不動産会社との賃貸契約の解除を働きかける方法を提案している。

 現在、不動産の賃貸契約の大半には、借り主が暴力団関係者であることなどが判明した場合、貸主が契約を解除できる条項が盛り込まれている。今回のケースでも、府警などによると、多くの所有者はこの条項が入った契約を不動産会社と交わしているという。所有者に関する情報を持つ市と、府警が協力すれば、問題の構図を元から断つことができるというわけだ。

 ただ、約2000人もの受給者が住まいを失う恐れがあり、早急に、転居先を確保したりすることが課題となる。

 暴力団排除に詳しい疋田淳弁護士は「法的に問題がなくとも、公金が暴力団に流れるのを見過ごすのは暴力団排除の流れに反する。市が転居支援などを行い、府警は所有者の説得や保護を担当するなど役割分担をして臨めば、現状は変えられるはずだ」と話した。

(2014年1月9日  読売新聞)

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