2014年4月18日金曜日

特定秘密国会監視 骨抜きの機関では駄目だ (徳島新聞社説) : 「あきれるのは、秘密保護法を担当する森雅子内閣府特命担当相が今月下旬、米国を訪問する方針を固めたことだ。監視機関制度や運用状況を視察するという。  政府の情報保全監察室、保全監視委員会の制度設計もまだ不十分ということだ。いずれも、法成立前に国会で議論を尽くすべきだった。」

徳島新聞 社説
4月18日付  特定秘密国会監視  骨抜きの機関では駄目だ  

 特定秘密の指定の妥当性をチェックする国会機関の設置に向けた与党の協議が始まった。腰の重い自民党に業を煮やした公明党が安倍晋三首相に直談判したからだ。

 だが、自民党は監視より秘密の漏えい防止を重視しており、このままでは「国会による政府監視」が看板倒れになることも危惧される。

 昨年12月に安倍政権が国民の反対の声を振り切って成立させた特定秘密保護法は、政府が特定秘密を量産して国民の「知る権利」や報道の自由を脅かす懸念がある。府省庁が秘密を独占し、国権の最高機関である国会より優位に立つ恐れもある。

 こうした懸念を現実にしないために、国会の監視機能を骨抜きにしてはならない。

 秘密保護法成立直後に内閣支持率が急落したのと前後して、政府は矢継ぎ早に監視機関設置を打ち出した。

 そのうち、保全監視委員会や情報保全監察室は政府内組織で、身内による監視は多くを期待できない。有識者の情報保全諮問会議も設置されたが、秘密の運用基準づくりに関して首相に意見を述べるにすぎない。唯一、第三者としての役割が期待されるのが国会の監視機関である。

 ところが、どうだろう。自民党案は当初「政府による秘密指定の適否を判断しない」としていた。さすがに党内外の異論を受けてその文言は削除されたが、「適否を判断する」とも書いていない。

 衆参それぞれに設置する機関が、国会の委員会から要請があったときに活動し、政府に意見を表明する。常任・特別委員会には秘密を提供しない。漏えいを心配する首相が消極的なのが理由らしいが、腰が引けた案といえる。

 公明党案は、衆参合同の機関が常時活動して秘密指定の妥当性を判断し、政府に改善を勧告できるとしている。秘密は常任・特別委にも原則的に提供される。

 自民党案よりも監視に前向きだが、秘密指定が不適切だと判断しても、指定を解除させる法的な強制力は持たせない。それでは恣意的な秘密指定の防止が担保できまい。

 両党は6月22日の今国会会期末までに国会法改正を目指すが、論点は多く、拙速な議論は許されない。

 秘密保護法は、府省庁から国会への特定秘密提供に関し「国の安全保障に著しい支障を及ぼす恐れ」があれば拒否できると規定している。拒否された場合にどうするか。国会が対抗措置を取れなければ、行政をチェックする役割は果たせない。

 あきれるのは、秘密保護法を担当する森雅子内閣府特命担当相が今月下旬、米国を訪問する方針を固めたことだ。監視機関制度や運用状況を視察するという。

 政府の情報保全監察室、保全監視委員会の制度設計もまだ不十分ということだ。いずれも、法成立前に国会で議論を尽くすべきだった。

 秘密保護法については、全国各地の地方議会が法成立後も撤廃や凍結を求める意見書を可決している。それだけ国民の批判は強いのだ。

 いったん法を廃止し、あらためて議論を深めてはどうか。少なくとも、国会や国民による監視の実効性が確保され、問題があれば特定秘密指定が解除できる仕組みが整備されるまで、12月の法施行は先送りすべきだろう。

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