2014年9月27日土曜日

コラム:米国が踏み出した「終わりなき戦争」 (ロイター) : 「敵と味方が絶えず入れ替わる一寸先の見えない戦争」 「出口のない戦争」 / イラクのアバディ首相は、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」戦闘員が、パリや米国で地下鉄攻撃を計画しているとの「信頼できる」情報を入手したと明らかにした




ロイター
コラム:米国が踏み出した「終わりなき戦争」
2014年 09月 26日 10:18

[24日 ロイター] - 米統合参謀本部のメイビル作戦部長は23日、シリアでの空爆を「イスラム国を破滅させるための持続的で確かな作戦」の始まりだと述べた。作戦はどれぐらい続くのかとの問いに、メイビル氏は「数年単位と考えている」と答えた。これはまさに、終わりのない戦争の始まりだ。

空爆はシリア領内で行われているが、アサド大統領が率いる殺人政権を狙ったものではない。攻撃対象はあくまで、シリアとイラクにわたる地域に「カリフ国家(預言者ムハンマドの後継者が指導する国家)」樹立を宣言したイスラム国だ。彼らはシリア政府の敵でもある。

しかし、共通の敵を攻撃するに際し、米国はシリア政府と手を組もうとはしなかった。オバマ大統領は2011年にアサド政権の退陣を要求。昨年には、アサド大統領が化学兵器を使用して「一線を踏み越えた」とし、シリア空爆に踏み切る寸前までいった。

米国は今回の作戦で有志連合を組むに当たり、特定の国を選り好みしているわけではない。空爆に参加したカタールは過去、シリア国内でアルカイダ系組織に資金提供していた。読者も知っての通り、アルカイダは米国にとって仇敵だ。実際に米軍は今週、シリアでアルカイダ系武装組織「コラサン・グループ」にも空爆を加えた。コラサン・グループは、米国や欧州で攻撃を企てていたとされる。

ただ、イスラム国がアルカイダの目の敵でもあるという事実が、われわれが踏み出した終わりなき戦争をさらに複雑にしている。イスラム国は今年に入り、シリアの別のアルカイダ系組織「ヌスラ戦線」と関係が悪くなり、アルカイダから分かれた。そしてヌスラ戦線もまた、アサド政権と戦っている。つまり別の見方をすれば、米国の敵の敵だからと言って、自動的に米国の味方にはならないということだ

もちろん、シリア国内にも米国に協調的な組織は存在する。反政府武装組織「自由シリア軍」の一部である「ハズム運動」などだ。ただハズム運動はアサド政権との戦いで、米国の敵であるヌスラ戦線と共闘している。ロサンゼルス・タイムズ紙の報道によると、ハズム運動は今回のシリア空爆について、「外部からの干渉」であり、「革命への攻撃」だと非難する声明を出した。

つまり、米国の友人であり、同時に米国の敵と共闘しているハズム運動は、米国がイスラム国掃討のためシリアで空爆を行った事実に異議を唱えているのだ。イスラム国はハズム運動にとっても敵であるのにだ。

その一方で、シーア派武装組織「ヒズボラ」は、レバノンとシリアの国境付近でヌスラ戦線に無人機で攻撃を行っており、イスラエル軍はシリアの戦闘機を撃墜している。

読者の頭が混乱するのも無理はない。しかし事態を理解するのに十分な時間はある。メイビル作戦部長が言うように、この戦争は何年も続くだろうからだ。

これは、敵と味方が絶えず入れ替わる一寸先の見えない戦争だ。米国の攻撃でイスラム国が弱体化すれば、一部で言われているようにアサド政権は息を吹き返すだろうか。それとも、ヌスラ戦線とイスラム国が、少なくとも当面は接近することになるのだろうか。あるいは、米国が資金援助する「穏健派」が力をつけ、イスラム国ではなくアサド政権に銃の照準を定めるようになるのだろうか。

当事者にも結果が想像できない戦争は、出口のない戦争だ。シリアやイラクの各組織は、どれも簡単に負けるようには見えないが、どこか1つが突出して強いようにも見えない。米国の介入がなければ、現在の対立は一段と激しくなるだけだろう。ただ米国の介入について言えば、国防総省でさえ出口を予測しようとしていない。

米国民にとってこの戦争は、少なくとも今のところは、背景で騒音が鳴り続けているかのようだ。戦死者数の集計や飛行禁止空域の指定、政権交代や選挙実施など、軍事的勝利を判断する通常の基準は、今回の戦争には当てはまらない。われわれの通常の考えに照らし合わせるには、国境も敵も軍事目的もあまりに流動的だ。

また、どうなれば平和だと判断するかの基準も見えない和平交渉もシャトル外交もなく、事態を平定して恒久平和をつくり出す支配的な勢力が出てくる兆しもない。 

シリアでの空爆に踏み切ったことで、この戦争はオバマ大統領の戦争となり、次の大統領の戦争、そしてわれわれの戦争になった。われわれは、恒久平和のための終わらない戦争に足を踏み入れたのだ。




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