2015年2月17日火曜日

京都の老舗理髪店、閉店へ 湯川秀樹、長谷川一夫も通う (京都新聞)

京都新聞
京都の老舗理髪店、閉店へ 湯川秀樹、長谷川一夫も通う

 京都市左京区下鴨松原町で1世紀以上続き、かつて銀幕スターや日本人で初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士も通った理髪店が3月29日で閉店する。3代目店主服部勝さん(76)は「今から思うと夢のよう」と往時の忙しさを思い出しながら「滞りなくでき、お客さんに感謝したい」と話す。

 1907年に開業した「ハットリ理容」。三重県出身の祖父京太郎さんが、京都郊外だった当時の愛宕郡下鴨村に開業した。「やり手だった」と勝さんが評する京太郎さんは、最盛期には七つの店舗を抱えるまで発展させた。

 23年の関東大震災後は、近くに松竹下加茂撮影所ができた。「映画の偉い人やで」と父喜長さんから紹介された顧客の中に、長谷川一夫さんや高田浩吉さんら銀幕のスターがいた。

 しかし、戦争で従業員が次々と出征。喜長さんが守る現在の店舗のみとなり、勝さんは20歳で店を継いだ。

 60年代前半の高度成長期はたくさんの客が訪れた。「大みそかは忙しくて朝の3時、4時まで営業した」と振り返る。しかし、66年のビートルズ来日が転機になったという。「長髪がはやってあかんようになった。暇になった」。

 いずれも亡くなったが、湯川博士、数々の映画の脚本を書いた依田義賢さん、国際政治学者高坂正堯さんに、蝶理創業者大橋理一郎さんら財界人も常連だった。

 2009年に「京の老舗」に表彰された。理容師の妻千鶴子さん(74)と現在もはさみを握るが、「今は閑古鳥が鳴く」と嘆く。

 閉店を決意したのは昨年の正月ごろ。客は「どこの店に行ったらいいねん」と言うが「手も全盛期みたいに動かんし、目もうとなって。お客さんに迷惑かける」。千鶴子さんも「もう十分や」と納得してくれた。

 土日開催のためこれまで参加できなかった同窓会に「今度から行くさかい」と伝えてある。趣味の水墨画、写真に加え、「地域の役もあって忙しいんや」と引退後の生活を描く。

【 2015年02月17日 08時10分 】

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