2025年4月17日木曜日

大杉栄とその時代年表(468) 1903(明治36)年12月1日~10日 「日本国民が非常に興奮しており、対露交渉の遅々たる有様に不満であることは、疑う余地のない事実だ。閣僚もこれを弁(わきま)えている。この国民の要求を考慮しない時は、自己の生命すら毎日、毎時最大の危険にさらされるのを百も承知なのだ」(ベルツの日記)

エルヴィン・フォン・ベルツ

大杉栄とその時代年表(467) 1903(明治36)年11月29日~12月 「僕は、海老名弾正が僕等に教えたように、宗教が国境を超越するコスモポリタニズムであり、地上の一切の権威を無視するリベルタリアニズムだと信じていた。そして当時思想界で流行しだしたトルストイの宗教論は、ますます僕等にこの信念を抱かせた。そしてまた僕は、海老名弾正の『基督伝』やなんとかいう仏教の博士の『釈迦牟尼伝』の、キリスト教及び仏教の起原のところを読んで、やはりトルストイのいうように、原始宗教すなわち本当の宗教は貧富の懸隔から来る社会的不安から脱け出ようとする一種の共産主義運動だと思った。」(大杉栄「自叙伝」) より続く 

1903(明治36)年

12月

南アフリカ・トランスヴァール政府、鉱山業界の圧力により中国人苦力の鉱山での使用認める。中国人苦力5万人が送り込まれる。苦力の統制がとれないため苦力強制送還の主張高まる。1907年に本国送還。

12月1日

啄木(17)、「愁調」5編(『明星』)。石川啄木の筆名で掲載(筆名「啄木」の使用開始)。注目を集める。

12月1日

(漱石)

「十二月一日(火)、雨。東京帝国大学文科大学で、午前九時から十一時まで Macbeth を講義する。授業中、二人の西洋婦人突然教室に入り傍聴する。午後一時から三時まで「英文学概説」を講義する。」(荒正人、前掲書)


金子健二日記、「九時昇校し拾時迄夏目講師の講義を聞く。二人の西洋婦人参観に来る。夏目氏の「マクベス中に現はれし幽霊に関する議論評講」は何人〔なんぴと〕も言はんとする所にして、毫〔ごう〕も注意に値すべきものなし。氏の長所決して此〔かか〕る点にあらず」(1903年12月1日)


12月3日

政友会松田正久・原敬、憲政本党犬養毅・大石正巳と会合、行財政整理・外交問題について両党提携を約束。

12月3日

「基督教世界」、11月28日開催の「(遊郭移転論)婦人矯風会大演説会」の記事。司会菅野須賀子。

12月10日の「基督教世界」第1059号には「大阪婦人矯風会」年次総会の記事。会長林歌子、文書課菅野須賀子。

12月3日


「十二月三日(木)、東京帝国大学文科大学で、午前十時から十二時まで Macbeth を講義する。」(荒正人、前掲書)

12月4日

ロシア、仁川に軍艦を集結。

12月4日

清朝、練兵処を設置、袁世凱を会弁練兵大臣に充てる

12月4日

外務次官に珍田捨己任命。

12月5日

山口県の福岡・広島両県への統廃合に反対して、県民有志が山口県反廃県同盟結成。

12月5日

アルバート・アインシュタイン、「電磁波理論」の論文をベルンの自然科学教会で発表。

12月7日

(漱石)

「十二月七日(月)、晴。東京帝国大学文科大学で、午前十時から十二時まで「英文学概説」を講義する。午後一時から三時まで Macbeth を講義する。

十二月八日(火)、東京帝国大学文科大学で、午前十時から十二時まで Macbeth を講義する。午後一時から三時まで「英文学概説」を講義する。「夏目先生は英國派の心理學者の學説をもとゝして文學の科學的研究を強調して居られるやうであるが、英國の心理學者は果たして文筆批判に役立つ程の権威を持つて居るのだらうか。」(金子健二)無題の英詩作る。」(荒正人、前掲書)

12月8日

川上音二郎(39)・貞奴(31)、横浜・喜楽座で公演。お伽芝居「桃太郎」「瘤取り」を上演。

12月8日

嵐寛寿郎、誕生。

12月8日

ラングレー博士、ポトマック川飛行実験失敗。

12月10日

第19議会開会、翌日解散。「勅語奉答文問題」。尾崎行雄・秋山定輔・小川平吉・大竹貫一らが衆議院議長河野広中と謀り、儀礼的な開院式勅語奉答文に桂内閣の対露軟弱外交弾劾字句を密かに入れる。河野が読上げ、小川の拍手につられて議場に大拍手が起こる(奉答文可決)。これは、内閣不信任に等しく、桂首相は緊急閣議を開催、参内して議会解散の允可を受ける。実は、戦争に備える政治工作


衆議院議長河野広中の勅語奉答文

「今ヤ国運ノ興隆洵(まこと)ニ千載ノ一遇ナルニ方(あたり)テ、閣臣ノ施設之ニ伴ハズ、内政ハ弥縫(びほう)ヲ事トシ、外交ハ機宜(きぎ)ヲ失シ、臣等ヲシテ憂慮措(お)ク能ハザラシム・・・」


赤十字病院雇医師E・ベルツの日記。

「日本国民が非常に興奮しており、対露交渉の遅々たる有様に不満であることは、疑う余地のない事実だ。閣僚もこれを弁(わきま)えている。この国民の要求を考慮しない時は、自己の生命すら毎日、毎時最大の危険にさらされるのを百も承知なのだ」

「(日露)戦争」をしなければ、日本は暗殺と内乱の渦にまきこまれる、と医師ベルツは観測している。


12月10日

「十二月十日(木)、晴。東京帝国大学文科大学で、午前十時から十二時まで Macbeth を講義する。「マクベスの幽霊に就て」脱稿する。」


「H.H Furness 編集の ""A New Variorum Edition of Shakespeare"" (Macbeth, 1878) の注釈を参考にし、独自の見解を立てたもの。(この年に改訂版刊行される。)『帝国文学』より、原稿料八円を貰う。これは最初の原稿料である。原稿枚数二十五、六枚であるから、一枚二十二、三銭である。(赤木桁平)金子健二は、十二月一日(火)の Macbeth の講義の感想として、「先生の講談としての授業は實に正確で感心するが、少なくとも劇中の幽霊評だけは一向に感心しない。理窟詰のお話しはぬきにされたがよからうと考へる」と書いている。」(荒正人、前掲書)

12月10日

仏物理学者マリー・キュリー、ピエール・キュリー夫妻、第3回ノーベル物理学賞授与。


つづく

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