2011年11月2日水曜日

「目を背けては被災者に申し訳ないなどという消極的な理由からではなく、本当にあれは日本が変わる契機なのだ。」(池澤夏樹)

池澤夏樹の「朝日新聞」のコラムに「終わりと始まり」という欄がある。
このところ原発をテーマにしたものが続いている。
前回は、原発推進派を不始末をした子犬に喩えたやや過激な内容であった(コチラ
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今回(11月1日掲載)は、ちょっと難しい問題だ。
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(見出し)
■遠い人々と身近な問題
温度差を理由とせず

(記事:但し、段落を施す)
(略)
先日、京都でタクシーに乗っていて、運転手氏とほとんど口論になった。
いわゆるタクシー会話で景気のことを話しているうちに先方が「日本中で今いちばん元気なのは福島ですよ」と言った。

「仕事はないのに金が上から降ってくる。パチンコ屋と居酒屋が満員御礼」と言うのを聞いて、むきになって反論するうちに、なんとも大人げないことを言っている自分に気づいた。

今年の三月十一日に起こったことは「東日本大震災」と呼ばれる。
できるかぎり広い地域名を冠しての「東日本」だ。

「西日本」からは遠いし、いわゆる温度差があることはよくわかっている。
日本中どこも景気が悪いことは誰も否定できない。

人が持ち得る関心の総量には限界がある。
だから、すべての日本人、あるいは世界のすべての人に、3・11に始まる地震と津波と原発事故の結果に強い関心を求めるわけにはいかない。

そうではないのだ。
あの日以来これまで「東日本」で進行してきたことは未来の何かにつながる種なのだ。
目を背けては被災者に申し訳ないなどという消極的な理由からではなく、本当にあれは日本が変わる契機なのだ。
だから遠い人も真摯に見ていてほしい。
*********(記事終わり)
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著者も書くように、「日本中どこも景気が悪い」。

出身が京都で、事情があってこのところ頻繁に京都に行っているが、私の聞くところ、「タクシー運転手氏」の景況判断は100%「あきまへん」である。

原発事故で外国人観光客が減る。
人々は外に出ずに屋内で遊ぶ傾向にある。

そして、なによりもベースの問題として、小泉「改革」(規制緩和)によるタクシー会社の乱立=タクシーの増加による1車当りの顧客数の減少がある。

出来高給だろうし、これら要因により、確実に、手取り給料は減ってきている。

更に、著者との会話の時間帯が、もし24時間に近い勤務の終盤近くであったら尚のことであるが、「運転手氏」が、著者の書くようなことを言ったとしても、それは理解できないことではない。

それは、嘆きなのだ。

だからといって、その「運転手氏」は自分が地震・津波・原発事故の被災者でありたいとは、決して思っていないと思う。

うんと希望的に言えば、距離の分だけ被災者への同情心は薄いかもしれないが、堂々たる脱原発論者だっていうこともありえる。

そう思いたい。

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