ニューズウィーク日本版
朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解
冷泉彰彦
2014年09月18日(木)12時18分
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しかし、こうした「国際社会に誤解されている」という議論は、それ自体が「誤解」であると考えるべきです。以下、その理由を指摘したいと思います。
一点目は、80年代末にこの「従軍慰安婦」問題が知られるようになって以降、たとえ偽りの証言や、誤報によって「狭義の強制」があったという伝わり方をしたとしても「現在の日本国の名誉や評判」はまったく傷付かなかったということです。
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第2の誤解は、したがって「枢軸国日本」の行動への批判がされると、まるで自分たちが批判されたように感じて、反論や名誉回復を行わなくてはならないという心情になる、そのこと自体が「誤解」であるということです。
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第3の誤解は、それでも軍の方針や軍の上層部の名誉を回復したいとして、これはこの欄でも再三申し上げてきたことですが、「狭義の強制」つまり銃剣を突きつけて「人さらいのように」女性を集めたというのは「事実でない」と主張することに「効果はない」ということです。
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第4の誤解は、「狭義の強制はなかった」という点など、「枢軸国日本の名誉回復」を進めることが、国際社会での日本の立場を強化するという考え方です。これは大変に危険な誤解です。というのは、この考え方で押し切れば、中国や韓国は「現在の日本政府や日本人は枢軸国日本の名誉にこだわる存在」つまり「枢軸国の延長」だというプロパガンダを国内外で展開することが可能になります。
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第5の誤解は、これは「朝日新聞」の立場に近い人々の間に見られると思いますが、日本の保守的な世論や、あるいは安倍政権がこの問題で強硬になれば、「いつかは強い外圧が来て何とかしてくれるだろう」という見通しがあるように感じられます。これも誤解だと思います。
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いずれにしてもこの議論では、「誤報により誤解されているから、その誤解を解きたい」という考えそのものが「誤解」だということを理解していただきたいと思います。
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