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2026年6月17日水曜日

シベリア抑留で亡くなった4万6300人は「誰」だったのか…70歳からパソコンを覚え、彼らの名前を「復元」した男性の“すさまじい執念” 奥間勝也が『未還の名簿 シベリア最下層捕虜・村山常雄の祈り』(青島顕 著)を読む(文春オンライン)

2026年4月21日火曜日

話題のパランティア本、『テクノロジカル・リパブリック』(日本経済出版)をサインがてら寄った紀伊國屋で買って早速読んだ。・・・・・パランティアは、倫理やポリコレをとっぱらったエリートこそが技術の可能性を復活させると言う。だが、これはテクノファシズムへの道だ。・・・・・(斎藤幸平)


 話題のパランティア本、『テクノロジカル・リパブリック』(日本経済出版)をサインがてら寄った紀伊國屋で買って早速読んだ。

興味深いのは、現在のシリコンバレーが本当の難題に立ち向かうのをやめ、楽に稼げる消費者向けアプリの開発に勤しんでいることへの批判である。デヴィッド・グレーバーを引きながら、現在の技術は結局これまであったもののデジタル模倣にすぎず、真のブレークスルーではないと喝破する。

結局、リベラリズムは、社会が進むべき方向を示すことなく、技術を野放しにした。その結果、テクノ支配階級は富を蓄積する一方で、私たちが手に入れたのは無料のウェブメールだけなのだ。それに対して、過去を振り返れば、インターネットや月面着陸のようなイノベーションが起きたのは、本来国家との官民協働のプロジェクトであった。

実は、そのような協働を復活させようという提案は、『人新世の「黙示録」』とも共通する。では、違いはなにか。パランティアは、倫理やポリコレをとっぱらったエリートこそが技術の可能性を復活させると言う。だが、これはテクノファシズムへの道だ。私はこの官民連関にこれまで排除されてきた民衆が参加する民主的計画こそが、真のブレークスルーを生むと信じている。必要なのは民主主義の否定ではない。むしろ、より多くの民主主義なのだ。

(斎藤幸平)



2026年3月8日日曜日

3世代に刺さる売り場生むコーチャンフォー 岩波文庫“全点”が大バズり(日経クロストレンド) / 【本屋はワンダーランドだ!/井上理津子】コーチャンフォー若葉台店(稲城・若葉台)1000坪の巨大本屋は「文化の柱の書籍、文具、CD、飲食を充足させたい」の結果(日刊ゲンダイ) / 【さらに本気出しました】 ​岩波文庫、ちくま文庫、ちくま学芸文庫に続き『講談社学術文庫』『角川ソフィア文庫』こちらも出版社在庫、全点揃えました。その数、約6,600アイテム。 ​これで主要な学術・古典文庫の「出版社在庫全点」が店内に集結。​フェアではなく、これが当店の品揃えです。 この圧倒的な『知の地平線』を、ぜひ店頭で体感してください。(コーチャンフォー📚️若葉台店@東京)

2025年10月15日水曜日

もう本当に衝撃…「あの」荒俣宏氏が「あの」蔵書2万冊を処分。半分は『産業廃棄物』扱い…一戸建てからマンションに。もちろん「終活」【記録する者たち】

2025年2月15日土曜日

[読売文学賞の人びと]受賞者に聞く<4>済州島の方言 扱いに腐心…研究・翻訳賞 ハン・ガン「別れを告げない」 斎藤真理子さん 64(読売) / 斎藤真理子さん、ハン・ガン『別れを告げない』で第76回読売文学賞(研究・翻訳賞)を受賞

2023年9月7日木曜日

「ナベツネはこう言いました」「復讐をするつもりでした」――芥川賞受賞作『ハンチバック』を書いた市川沙央さんの、ユーモアと決意に満ちた受賞スピーチを完全プレイバック! — 本の話@文藝春秋BOOKS / 右も左もない「読書バリアフリー」 芥川賞 の市川沙央さんが本紙に寄稿(産経);「十代半ばから月刊「正論」読者でもあった私のような筋金入りの人間に対して、読書バリアフリーを訴えるマイノリティな身体障害者という面だけを見て、こいつは反日だの、左の活動家だのと、ずいぶん皮相浅薄なことを言ってくるものだと悲しくなった。」

2023年8月19日土曜日

「前大統領、書店をひらく」(『世界』9月号)をよみました。 韓国の前大統領・文在寅氏が故郷に帰って書店を開いたとこと。その書店には小さな図書館も併設し、読者と著者が交流するブッククラブも作ったと。 「本は民主主義を意味し、民主主義を実現する力だと思います」という言葉が印象的。 — 有志舎・永滝稔

2023年8月12日土曜日

石塚昌家・岸政彦監修、沖縄タイムス社編『沖縄の生活史』(みすず書房)を読んでいる 2023-08-12

8月12日(土)

『沖縄の生活史』を読んでいる。図書館からの借りだしだが、一回の借りだしでは読み切れず、いまは二回目だけど、四回は必要かも。『東京の個人史』の時は三回の貸し出しで読み切ったと思う。但し、今回また、東京の方を読みたくなってきた。

あくまで個人の記憶に基く語りなので、語られなかった部分だとかをあれこれ想像したり、聞き手の感性を想像したりするのもまた楽しい。但し、「楽しい」なんて感想を言うのも失礼なほどの艱難辛苦がある。 

 


▼『東京の生活史』のとき、何回目かの返却直前



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2023年2月2日木曜日

「ヒトラーもしばしば平和を唱えたが、彼の言う平和は自身の望むところに人々を降伏させることだった。」 「『専守防衛』という言葉も他国に脅威を与えるような『専守防衛』になっていないか。他国に不安を与えるならば必ず日本の不安となって跳ね返ってくる」(「100分de名著」「シャープ『独裁体制から民主主義へ』」) / 「一見強固で揺るがないようにみえる独裁体制には、その力の源を断つことで容易に瓦解する脆弱さが潜んでいます。綿密にたてられた全体計画、弱点に集中すべく慎重に選ばれた戦略、徹底して貫かれる非暴力によって、執拗かつ広範に展開される市民の運動が、やがて独裁体制を覆すことを可能にするといいます」    

 

2023年1月17日火曜日

文前大統領、まちの本屋開く…「本屋さん」として住民とコミュニケーション(ハンギョレ) / [文前大統領インタビュー]「村がデモで覆われた時、平和な本屋を考えた」(1)(2)   

 

2022年12月25日日曜日

おくやみ・渡辺京二さん死去、92歳「逝きし世の面影」「黒船前夜」「バテレンの世紀」など。石牟礼道子さんと水俣病患者の支援組織「水俣病を告発する会」結成、「熊本風土記」「暗河[くらごう]」「炎の眼」などの雑誌を刊行(2022年12月25日)熊本日日新聞   

 

 

▼お元気そうだったのに、、、


▼いつも机の脇に置いてました 


▼最近読んだ本 水俣病闘争との関わり、石牟礼道子さんとの共闘関係など


2022年7月19日火曜日

2022年3月30日水曜日

ヤフオク開始価格に騒然! → 超入手困難 世界初【戦前『岩波文庫書目綜覧』】1940年(昭和15年)現在 全世界の図書館などに所蔵なし 世界にたった1冊の幻レベルの書

 

2022年1月16日日曜日

お正月明け、図書館予約本が集中してきた! 降れば土砂降りとはこのこと? 2022-01-16

 1月16日(日)、はれ

「降れば土砂降り」

市立図書館の予約本がお正月明けに6冊も降って(?)きた。しかも、『東京の生活史』『ブルシット・ジョブ』『明石家さんまヒストリー1』は半年以上の待ち行列をクリヤしたもの。これは、この20数年来、初めて体験する「降れば土砂降り」状況だ。待ってる時はなかなか来ないのにね。

でも、幸い『ブルシット・ジョブ』は正月明けすぐに来たので、今はかなり消化したし、本書刊行以降ウェブ上の解説なども豊富で(訳者によるものもある)多分、自分なりには理解できていると思うんで、これは何とか行けるかな。実は、あろうことか昨年末、講談社現代新書から訳者が『ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか』を出版。本書を待ってるより、これが早かったか!みたいな気分になる。

次に、明石家さんま本は、これはメチャ面白い本だけど、ま、ごろ寝しながらもう半分以上はいけた。今更ながら「ヒストリー2」があることに気付いて、昨日予約を入れた。来るのはまだずっと先なので、変なハナシ、ほっとしている。関西の、また時代の、空気感が心地よい。例えば、さりげない表現の中に、会話中の相手のことを「自分」と言う箇所があったり。そんな人、居たね、若い頃には。関西の「自分」は、ある時は「自分」で、またある時は会話中の相手の事を指す。

問題は『東京の生活史』をどう消化するか、に収斂する。この分厚さ(↓)なので、返却期限の1/29は多分ギリギリいけるかどうか。目次を見て興味あるものから攻略していこうと思う。刊行直後、NHKでも特集されていたので、概観は理解しているつもり。しかし、こういうフィールドワークはディティールが肝心。なので、流し読みは禁物だ。

この、オタオタ、どうしよう?感、嫌いではない。





2021年12月30日木曜日

2021年、今年読んだ本

2021年、今年読んだ本(但し、この中には、雑誌1,展覧会図録1,再読・再々読18冊が含まれている)。

今年は特に、コロナ禍で苦しむ人々と彼らを支援する人々の現状を取り上げた本(レポート)が特に印象に残った。









『韓国からの通信の時代』の著者池明観(97歳)さんが亡くなられた

2021年10月10日日曜日

「こども食堂は現代の大発明」 格差・貧困問題に長年取り組む湯浅誠さんによる渾身のルポルタージュ(AERA); 湯浅誠『つながり続ける こども食堂』(中央公論新社)


▼読みました


 

2021年6月30日水曜日

2021年1月~6月に読んだ本纏め 2021-06-30

 6月30日(水)、曇り(時々雨)

今年1月から6月までに読んだ本を纏めてみた(内、再読は8冊)。

大半が図書館で借りた本で、自分の本棚から引っ張り出してきたのは再読8のうちの6冊だけ。グループ分けしてみると、、、茨木のり子関連本が10冊、韓国現代史関係が4冊、貧困・ホームレスなど関係本が4冊、となる。

金智英『隣の国のことばですもの』は、いま再構築している茨木のり子年譜の根幹になるもの。超ベストセラー斎藤幸平『人新世の「資本論」』は、今まで自分の中ではマユツバ的に見ていた環境問題を見直す契機になるかもしれない(一度ギブアップしたナオミ・クラインの新著を読んでみたいと思った)。





稲葉剛ほか編『コロナ禍の東京を駆ける: 緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(岩波書店)の編著者稲葉・小林夫妻に関して、たまたま今週日曜早朝のNHK「こころの時代」がその活動を取り上げていた。


2021年6月21日月曜日

山田清機『寿町のひとびと』(朝日新聞出版)を読む

 


横浜のドヤ街「寿町」に密着して、流転の末にこの街に流れ着いた「ひとびと」や、この街とこの街に生きる「ひとびと」を支える「ひとびと」の哀しみや喜びに満ちた人生を描いたルポルタージュ。「ひとびと」が生きた時代背景、街の遷り変りを織り交ぜて、これは読ませる本だ。

「あとがき」より

管理社会などという言葉はとうに過去のものになり、個人に関するありとあらゆるデータが収集され、分析され、頼みもしないのに最適解を送りつけられる時代に、非常識であることはいったいどんな憲味を持つだろうか。生産性もなく、時に不快で、時には危険ですらある非常識なびとびとがこの世に存在することに、意味はあるのだろうか。

少なくとも私は、寿町のひとびとから「こんな人生もありなのだ」と教えられた。社会的な評価や栄達とはまったく無縁だが、固有の、濃厚な生き方が実在することを教えられた。


▼書評など


例えば、本書「第一三話」はこの街を支えてきた「ひと」について、、、
 
寿町を語る上で欠くべからざる人物のふたり目は、横浜市寿生活館の生活相談員だった加藤彰彦である。別名、野本三吉。加藤は寿町での体験をもとに、野本三吉名で数冊のノンフィクションを世に送り出し、寿を離れた後、幾度かの変転を経て沖縄大学の学長になった人物である(現在は同大学名誉教授)。
越冬闘争の始まりと寿生活館の自主管理時代を描いた『寿生活館ノート』(田畑書店)という書名は、すでに引用文の出典として記したが、加藤はこれ以外にも『風の自叙伝-横浜・寿町の日雇労働者たち』『裸足の原始人たち-横浜・寿町の子どもたち』(いずれも『野本三吉ノンフィクション選集』所収・新宿書房刊)など、寿町を舞台にしたノンフィクションを上梓しており、『裸足の原始人たち 寿地区の子とも』(初版は田畑書店刊)で第一回日本ノンフィクション賞を受賞している。





2021年6月17日木曜日

『絶望死のアメリカ』を読む(1) 著者 概要(「はじめに」による) 目次 書評3つ

 


アン・ケース、アンガス・ディートン(著)、松本裕 (翻訳) 

『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』(みすず書房)

原題=DEATHS OF DESPAIR AND THE FUTURE OF CAPITALISM

《著者》

アン・ケース(Anne Case)

プリンストン大学経済学・公共問題名誉教授。専門は医療経済学。2003年、小児期の経済状態と健康状態の関係についての研究で国際医療経済学会のケネス・J・アロー賞を受賞。2016年、中年期の罹患率と死亡率についての研究で米国科学アカデミー紀要のコザレリ賞を受賞。現在、アメリカ国家科学賞大統領諮問委員、国家統計大統領諮問委員を務める。


アンガス・ディートン(Angus Deaton)

プリンストン大学経済学・国際問題名誉教授。南カルフォルニア大学経済学学長教授。専門は、貧困、不平等、医療、経済開発。2015年、「消費、貧困、福祉」に関する分析でノーベル経済学賞を受賞。邦訳書『大脱出』(2014、みすず書房)。

《概要》

「はじめに」より

調査の過程で、中年の白人アメリカ人の自殺率が急速に増えていることがわかった。それに、もうひとつ困惑するような事実も判明した。中年の白人アメリカ人は、ほかの形でも苦しんでいたのだ。彼らには、病みと病気の報告例も多かった。・・・・・

・・・・・私たちはアメリカ疾病予防管理センター(CDC)でデータをダウンロードし、計算してみた。驚いたことに、中年の白人の間で増えていたのは自殺率だけではなかった。すべての死因による死亡率が増えていたのだ。・・・・・

(略)

・・・・・死亡率全体の変化の原因となるほど、自殺の数は多くない。そこで、ほかの原因に目を向けてみた。意外にも、「中毒事故」が大きな要因を占めていた。・・・・・私たちが(当時)知らなかったのは、「中毒事故」という区分には薬物の過剰摂取も含まれること、そして鎮痛剤として確立され、今も急速に普及しつつあるオピオイドによる死亡が蔓延していたという事実だった。アルコール性肝疾患による死亡率も急増していたので、もっとも増加率の高い死因は三つに絞られた。自殺、薬物の過剰摂取、そしてアルコール性肝疾患だ。これらの死因はすべて自ら招いたものだ。手っ取り早い方法は銃。より時間がかかり、より確実性が低いのは薬物中毒。さらに時間がかかるのはアルコール中毒だ。私たちは、これらを「絶望死」と呼ぶことにした。・・・・・

本書はこれらの死と、それによって死に向かっている人々についての本だ。・・・・・

《目次》

序文

はじめに──午後の死


第Ⅰ部 序章としての過去

第1章 嵐の前の静けさ

生と死を記録する

死亡率の変わりゆく側面

生物学と生活習慣


第2章 バラバラになる

アメリカの例外論。過去との決別。置き去りにされる下層民──さまざまな事実

死亡率の地理学

持ちこされる問題──年齢とコホート効果


第3章 絶望死

だが、ほかにも何かが起こっているはずだ

中年期にだけではない──若いアメリカ人の絶望死


第Ⅱ部 戦場を解剖する

第4章 高学歴者(と低学歴者)の生と死

教育が人生に与える影響

教育と能力主義

死と教育

誕生という運命


第5章 黒人と白人の死

黒人と白人の死亡率──さまざまな事実

絶望死の今般エピデミックにおける黒人と白人

アフリカ系アメリカ人の絶望


第6章 生者の健康

生者の健康を測る

生者の状態──健康についての自己申告

生者の状態──ほかの指標

働く能力

まとめ


第7章 悲惨で謎めいた痛み

アメリカの痛み

痛みについてのさまざまな事実

痛みが増加する原因と結果


第8章 自殺、薬物、アルコール

自殺

ドラッグとアルコール


第9章 オピオイド

オピオイド

どうしてこんなことになったのか?

エピデミックと絶望死

企業の力と個人の幸福


第Ⅲ部 経済はどう関係してくるのか?

第10章 迷い道──貧困、所得、大不況

貧困

不平等

所得と大不況

ヨーロッパにおける不景気、緊縮、死亡率

死と産業空洞化

大不況リターンズ


第11章 職場で広がる距離

1基のエスカレーターが2基になり、そのうち1基が止まった

成長、所得不平等、賃金

収入と賃金

低下と停滞を誇張しているか?

労働人口への出入り

変化する低学歴層の仕事の質


第12章 家庭に広がる格差

結婚

子育て

コミュニティ

人は自分の人生をどのように評価するのか?

まとめ


第Ⅳ部 なぜ資本主義はこれほど多くを見捨てているのか?

第13章 命をむしばむアメリカ医療

医療支出と健康成果

アメリカ人は払った額に対して何を受け取っているのか?

お金はどこへ?

誰が支払う? 高額医療費の帰結

なぜ医療はこんなに難しいのか?

みかじめ料?


第14章 資本主義、移民、ロボット、中国

移民と移住

グローバル化、貿易、イノベーション、ロボット

政策とグローバル化

アメリカのセーフティネット──グローバル化と人種


第15章 企業、消費者、労働者

アメリカ資本主義、今昔

独占と寡占──過剰請求力

市場支配力が蔓延している証拠

市場支配力は修正するべき現代の問題なのか?

労働市場と買い手独占──不当賃金力

厳しくなる職場、衰退する組合

企業の行動

ワシントンでの企業と労働

企業と労働者、まとめ


第16章 どうすればいいのか?

オピオイド

医療

コーポレート・ガバナンス

税制と給付政策

反トラスト

賃金政策

レントシーキング

教育

ほかの富裕国に対する教訓

失敗ではなく未来へ


謝辞

索引

原注


《書評1》

朝日新聞(2021年03月20日)書評

「絶望死のアメリカ」他1冊 心身損なう困窮を招く学歴格差


 トランプ政権の成立の背景として、米国の白人労働者の困窮は日本でも伝えられてきた。『絶望死のアメリカ』は、それが死亡率の上昇にまでに至っているという事態の深刻さの全体像をデータで描き出すとともに、資本主義のありかたとの関係を論じている。

(略)

 著者らが絶望死と呼ぶのは、薬物、自殺、アルコールという三つの要因による死だ。この増加が、1999年以降、45~54歳の非ヒスパニック系白人の死亡率を反転上昇させているという。

 健康悪化に襲われているのは白人内でも低学歴の労働階級だ。本書には学士号の有無でデータを比べたグラフが多数並ぶ。死亡率に加え、健康状態の自己評価、深刻な心理的苦痛、昨日痛みを感じた人の割合、飲酒時の平均的杯数。学士号未満ではどの数値も悪く、その度合いが増している。

 なぜ薬物や酒に追い込まれるのか。平均所得、雇用比率、結婚、教会への参加率、人生への自己評価。いずれも学歴での分断が広がる。学士号未満の層では、賃金や仕事の質の劣化に加え、家族や職場、コミュニティを基盤にした生活様式の崩壊が進行している。

 労働階級の衰退と絶望。その原因の筆頭に挙げられるのは、米国の医療制度だ。中毒死を起こす鎮痛剤(オピオイド)を合法的に蔓延(まんえん)させただけではない。巨額の医療負担が業界の利益に消え、貧乏人から金持ちへの「上への再分配」が起きている。米国経済のあちこちで横行するこうした「明らかな不正義」に焦点をあてた改革は、左右両翼から支持されうるというのが著者らの主張だ。

(略)


《書評2》

日経新聞(2021年3月13日)

絶望死のアメリカ アン・ケース、アンガス・ディートン著

医療制度から解く米の病理

米国のトランプ前大統領を支持した白人労働者の困窮は多方面で論じられてきた。本書は貧困と医療経済を専門にした2人の米経済学者による研究で、安直なトランプ論ではない。バイデン氏に引き継がれた米国の病理が見事に分析されている。


著者は白人中年の死亡率の高さを手掛かりに米国の資本主義の歪(ひず)みを可視化する。白人中年の死因で増加率が高いのは、自殺、オピオイド系鎮痛剤など薬物の過剰摂取、アルコール性肝疾患だ。本書が「絶望死」と名付けるこれらの犠牲者は圧倒的に高卒以下の層に偏っている。学歴による分断は鮮明だ。


世界共通の資本主義の問題と米国特有の課題は切り分けて論じられる。米国の特徴は人種問題とセーフティーネットの欠如だが、それ以上に問題なのが欠陥に満ちた医療制度である。オバマ政権が導入した新たな保険制度の後でも大量の無保険者がいるが、最大の問題は莫大な医療コストだ。それが「経済にとって維持不可能な重荷となって、賃金を引き下げ、いい仕事を減らし」、政府が提供する「教育、インフラといった公共財と公共サービス向けの資金を食いつぶしている」と著者は説く。

(略)


《書評3》

WEB本の雑誌 新刊めったくりガイド

分断と格差が生み出す『絶望死のアメリカ』

文=冬木糸一


 アメリカ人の平均寿命が、二〇一五年から三年連続で減少し、先進国の中でも異例といえる動きを示している。その大きな要因として挙げられているのが、自殺、薬物依存、アルコール関連疾患の三つをまとめた絶望死と呼ばれる死因で、これが現在アメリカ人、中でも働き盛りの中年の白人男女の命を蝕んでいる。いったいアメリカで今何が起こっているのか。その実態を描き出していくのが、アン・ケース、アンガス・ディートン『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』(松本裕訳/みすず書房)だ。


 問題は絶望死そのものというより、これが明らかにする国内の分断だ。たとえば、絶望死の内訳をみていくと、死者が増えているのは四年制の大学に行っていない層だとわかる。この層では、九五年から二〇年の間で絶望死が十万人あたり三七人から一三七人に増えていて、学士号を持つ層ではそのリスクはほとんど変わっていない。また、四五〜五四歳の白人死亡率は九〇年代の前半から一定を維持しているように見えるが、学士号未満の白人は死亡率が二五%増加していて、学士号を持つ白人は四〇%も減少しているという、極端な学歴格差が存在している。その背景には、グローバル化による工場移転、自動化による労働の減少など様々な要因が考えられるが、絶望死の増加は先進国ではアメリカだけで起こっていることだ。なぜこれがアメリカで起こっているのか。その原因としては、慢性的な痛みに対して過剰に処方されている薬物オピオイドの存在や、先進諸国と比べて約三倍も高額な薬剤をはじめとする医療システムの問題が複雑に絡み合っている。中毒者を増やすことで利益を増やす製薬会社、ロビィ活動に金をかけることで、より金持ちが優遇されていくシステムなど、本書の議論はみな資本主義の失敗に繋がっている。アメリカが現在の苦境を乗り越えることができるのか、我々が同じ道を進まないようにするために何をしたらいいのかなど、多くの問いかけと答えを内包した一冊だ。

(略)