2015年3月22日日曜日

【TSUTAYA 図書館の是非】 住民目線に欠ける維新の発想 (大阪日日新聞) : 松原市 地域の小規模図書館を閉じ、代わりに市中心部に「TSUTAYA図書館」をドンと作りたい

大阪日日新聞 連載・特集 » 浅野秀弥の未来創案
【TSUTAYA 図書館の是非】 2015年3月16日
住民目線に欠ける維新の発想

 ある地域図書館閉館条例を考察すると「地域主権・地方主権、また政府が行おうとしているふるさと創生に逆行するのでは?」と考えさせられた。

 佐賀県武雄市で、橋下徹氏の盟友を自任する樋渡啓祐・前市長が作ったTSUTAYA図書館。「私語OK、コーヒー片手に読書OK」が売りのこの図書館に、県内外から行政関係者や議員の視察がひっきりなし。視察後「わが街にもこんな図書館を!」と熱く語る首長も多く、実際にかじを切った自治体が大阪府内にもあった。

 人口約12万人の松原市だ。大阪市と堺市に挟まれた小さな街で、本年度中に二つの地域図書館が閉館と休館に追い込まれた。どちらも表向きの理由は「老朽化した建物の耐震補強のため」というが、ならば耐震補強後図書館サービスを再開するはず。ところがそうならないのは、どうやら市は地域の小規模図書館を閉じ、代わりに市中心部に「TSUTAYA図書館」をドンと作りたいようなのだ。

 これでは子供やお年寄り、体の不自由な方々らと近隣の人々との接点の場でもあった身近な地域図書館を閉め、「本を読みたければ、市街地中心部まで来て」といわんばかりの政策である。

 ここで橋下・維新の話。維新の会が推し進める「大阪都構想」のうたい文句に「住民に身近な(あるいは優しい)基礎自治体を目指す」とある。実際には、1特別区あたり平均人口が約53万人と、府内最大の衛星市誕生にすぎない。東大阪市(約49万人)よりも人口の多い基礎自治体を新たに作る計画に「何をかいわんや」である。

 松原市の推し進める図書館行政は、まさしくこの発想に似ている。「中央集権?中央集約型から地方主義?地域主権へ」という、社会トレンドとも合わない。住民目線、住民サービスを置き去りにした地方創生はけっして成り立たない。

 樋渡氏は武雄市長を辞し、先の佐賀県知事選挙に出馬し敗北した。松原市の地域図書館閉館条例はこの3月議会で議員の判断に委ねられ、待ったなしだ。地域代表である市議各位は、本来図書館に求められる役割を再確認し、賢明な判断をしてもらいたい。

 あさの・ひでや(フリーマーケット=FM=社社長、関西学生発イノベーション創出協議会=KSIA=理事長)1954年大阪市生まれ。わが国のFM創始者で日本FM協会理事長。関西経済連合会幹事。数々の博覧会等イベントプロデュースを手掛ける。



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