最近になって立法府も死にかけてきた。民意を反映しない選挙制度が一強多弱の体制を生み出し、それにうんざりした国民の無関心が投票率を下げ、全国民の二十四パーセントの票を集めたにすぎない自民党と公明党が絶対多数になった。しかも議員の多くは党の方針に逆らえない若手の陣笠くんたち。かくして国会はヤジと手続きの機関に堕した。
今の日本は行政府の独裁という状態である。
集団的自衛権についての審議が始まるはるか以前、この四月三十日に安倍首相がアメリカで、この法案の成立を約束し「日米同盟はより一層堅固になる。この夏までに成就させる」と宣言した。それでも国会は立法府を侮蔑するあの発言を問題視しなかった。本来ならばあれだけで内閣不信任の動議が出され、場合によっては解散、総選挙だったはずだが、そよとも風は吹かなかった。国会は行政追認の大政翼賛会と化した。
既に司法なく、今また立法なし。日本は三権分立で運営される民主主義国家から行政独裁へと、途上ならぬ途下の通を粛々と歩んでいる。三脚のはずが一脚では立てない、主権在民という地面に穴を穿(うが)たないかきり。
というところまで来て、さすがに理性が働きはじめたか、憲法学者三名揃っての違憲論が政権の暴走にブレーキを掛けた。世論調査によれば、安倍首相の説明が不充分だと思っている国民が過半数。実際、あの説明は論旨の骨もないぶよぶよの代物で、公明党も困惑している。
学者の意見や国民の声で強行採決が阻めるか。それはそれでこの国の成熟を示すものだろうが、三権の方はどう修理すればいいのだろう。
『朝日新聞』2015-07-07

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