2013年5月18日土曜日

英フィナンシャル・タイムズ紙 アベノミクスだけで構造改革はできない(社説)

日経新聞
Financial Times(翻訳)
[FT]アベノミクスだけで構造改革はできない(社説) 
2013/5/17 14:00
(2013年5月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 日本経済の実質成長率は2013年1~3月期に高い伸びを示し、安倍晋三首相が進める積極的な財政・金融政策の効果が裏付けされた。政権与党が7月の選挙で善戦するとの声も出ているようだ。しかし、日本経済がこれで長年の低成長に終止符を打てたのかは疑わしい。

■リスクにもなる円安やインフレ

 年率換算で3.5%増という成長率はそれ自体歓迎すべきものだ。新規需要の半分以上を個人消費が占め、残りは外需や公共投資がけん引した。これはアベノミクスと呼ばれる経済政策が、黒田東彦新日銀総裁が大胆な金融政策を発表する前に既に効果を発揮していたといえる。

 足元の急激な円安に加え、今後は日銀の金融政策の効果も期待され、次の四半期も好結果が続く可能性がある。黒田総裁は通貨供給量の残高を2年間で倍にし、物価上昇率を年2%にすることを目指している。

 だが、安倍政権が進める経済政策の合わせ技でも解決できない問題も多い。円安は他国の競争力を低下させるため、過度の円安進行には海外で批判が高まるだろう。主要7カ国(G7)やアジアの近隣諸国では既に不満の声が聞かれる。

 黒田総裁の金融緩和策は、過度のインフレや景況感の悪化を招き、消費や投資の減少という事態を引き起こすリスクもある。巨額の公的債務も不安定要因だ。

■人口減少や投資配分に根ざす構造的問題

 たとえこうしたリスクが克服できたとしても、現政権の政策では日本経済の根本的な問題を解決できない。これは最も重要な成長課題が人口構成の変化や投資配分に起因する構造的なものだからだ。高齢化と人口減少は成長の大きな足かせだ。また、製造業による低コストの東アジア諸国へのアウトソーシングも為替水準にかかわらず続くだろう。

 安倍政権はまずこうした事実を直視することだ。日本国内には投資対象となるような生産性の高い施設が少ない。企業の余剰資金は海外か新たな知識集約型産業に向かうだろう。労働政策も女性や若者に有利なものにしなければならない。短期的な景気刺激策は構造改革の手助けにはなっても、その代わりにはならない。

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