2014年12月6日土曜日

雇用と賃金/数字の中身を見極めたい (神戸新聞社説) : 「増えたのはパートや派遣社員など非正規で、正社員はむしろ減っている。」 「不安定な雇用が増え、正規と非正規、大手と中小の格差はむしろ拡大したのが現実だろう。」  

神戸新聞 社説
2014/12/04
雇用と賃金/数字の中身を見極めたい
 
 「経済政策において、最も重要な指標、それはいかなる国においても、雇用であり、賃金である」。安倍晋三首相は、消費税再増税の延期と衆院解散を表明した会見で、こう強調した。そのことに異論はない。

 経済政策アベノミクスは、そうした指標からも成果を挙げつつあると安倍首相は胸を張る。

 確かに、政権交代があった2012年に4%を超えていた失業率は、3%台半ばに下がった。有効求人倍率も、0・8倍だったのが1倍を超え、求職者数より仕事の数の方が多くなっている。

 問題は、雇用の中身である。

 安倍首相が強調する成果の一つは、政権発足後、雇用が100万人以上増えたことだ。だが、増えたのはパートや派遣社員など非正規で、正社員はむしろ減っている。

 「22年ぶり高水準」と強調する求人倍率は、この10月、パートタイムが1・39倍だったが、正社員は0・68倍にとどまる。

 今春、2%を超えた賃上げも大手企業に限った話だ。中小は65%が賃上げしたが、深刻な人手不足が背景にあり、人材確保のための苦しい選択と言える。不安定な雇用が増え、正規と非正規、大手と中小の格差はむしろ拡大したのが現実だろう。

 自民党は、パートや派遣社員らの正規雇用への転換を進めるとするほか、多様な働き方や公正な処遇を掲げる。公明党も、賃金増と正規雇用拡大に向けた取り組みを強調する。

 一方で、自公政権は派遣労働者の受け入れ期限の撤廃や、一定以上の収入があるホワイトカラーの労働時間規制の適用除外ができる制度づくりを目指す。働く人を守ることより、企業側の使いやすさに偏った制度にならないか、懸念が強まる。

 これに対し、民主党は労働法制の改正阻止や、「同一労働同一賃金推進法」の制定を掲げる。維新の党も同一労働同一賃金の法制化を訴え、共産党はブラック企業規制法を主張する。社民党は、直接雇用の原則徹底や最低賃金の引き上げを訴える。実現の道筋をどう描くのか、明確に示してほしい。

 働く人は、税金や保険料の負担を通じて国づくりや社会保障制度を担う。安定雇用や賃上げを社会の活力にしていくための政策も選挙の大きな争点である。

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