北海道新聞 卓上四季
米朝さんと戦争
03/21 10:02
在りし日の桂米朝さんを思うと、全編1時間を超す大ネタ「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」が浮かぶ。<サバの食あたりで亡くなった男が、あの世を巡る。ご隠居さんや芸者などとさんずの川を渡り、えんま庁へ。地獄行きかと思いきや、一芸に秀でた者は極楽へ通すと言われたから、さあ大変。庁内はさながら隠し芸大会の場に…>
▼人気を呼んだのは、死後の世界をユーモアたっぷりに描いたからだけではない。辛口の時事問題を笑いのクスグリとして、盛り込んだためだろう
▼地獄にある死人リストの死因を、ベトナム戦争や公害病にしたり、共通1次試験と地獄を重ねたり。きょうは何が飛び出すのか。毎回、心待ちにするファンも多かった
▼親の影響で、子どものころから落語好きだった。プロになったのは戦争が引き金だ。多くの若手はなし家が犠牲になり、上方落語の灯を消してはならないと思ったという
▼<戦争は、人を殺したらほめられる。殺したくなくても、殺されるかもしれん。嫌やった>(「歳々年々、藝(げい)同じからず」)。寄席以外でも社会問題に対し活発に発言した。「九条の会・おおさか」の呼び掛け人になり、憲法の平和主義の大切さを訴えた
▼折しも与党は安全保障法制の骨格で合意した。自衛隊の活動が際限なく広がり、戦闘に巻き込まれる可能性が高まりかねない。米朝さんなら極楽の高座でどんなクスグリを入れるだろう。
2015・3・21
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