トリックスターとなった小説家、野坂昭如のために作られた「マリリン・モンロー・ノーリターン」
2014.09.26 佐藤 剛
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売れっ子小説家だった野坂昭如が歌う「マリリン・モンロー・ノーリターン」は、1970年11月に行われたプロの作曲家コンクール、「合歓ポピュラーフェスティバル’70」で誕生した歌だった。
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雲水姿、歌詞書き込んだ経文を手に、フルバンドバックに熱唱、当日一番の拍手もらったが、審査の結果は、パフォーマンス賞のみ。
見るからに聞くからに、いかにも変な歌だった「マリリン・モンロー・ノーリターン」だったが、会場の観客から大喝采を浴びたことで特別にパフォーマンス賞を受賞した。
イベント終了後にはコロムビア・レコードの関係者から打診があり、桜井順と野坂昭如にレコード・デビューの道が開ける。
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2000年9月2日、青山CAYにて行われたイベント「青山246深夜族の夜」で、クレージーケンバンドをバックに「マリリン・モンロー・ノーリターン」を歌う野坂昭如、見事な歌唱です。
マリリン・モンロー・ノー・リターン/CKB・野坂昭如
野坂昭如の「黒の舟唄」を歌い継いだ盲目のシンガー、長谷川きよし
2014.10.03 佐藤 剛
野坂昭如が歌ったシングル盤の「マリリン・モンロー・ノーリターン」は、1971年にコロムビアからレコード発売された。
しかし、時代のトリックスターだった直木賞作家が歌手デビューするという話題性で、マスコミには派手に取り上げられたものの、それほどヒットしたわけではなかった。
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それはB面に入っていた「黒の舟唄」のおかげだった。
「マリリン・モンロー・ノーリターン」と「黒の舟唄」は、どちらもクレジットに”作詞・能吉利人 作曲・桜井順”と記されている。
能吉利人という謎めいた名前の作詞者が、CMソングのヒットメーカーだった作曲家の桜井順と同一人物であることなど、当時はまったく知られていなかった。
当然のように誰もが野坂が歌詞を書いたと思ったのは、小説に描かれる世界と歌詞のイメージが、ぴたりと重なっていたからだ。
やがて多くの人の胸に何かが引っかかった「黒の舟唄」は、盛り場の酒場などで口コミによって広まっていく。
そして1年が過ぎて知る人ぞ知る名曲というポジションを得たところで、歌に新しい生命を注いでくれるシンガーとの出会いが待っていた。
黒いサングラスをかけた盲目のシンガー・ソングライター、長谷川きよしによって力強いギターと共に歌割れる「黒の舟唄」は、歌詞に描かれていた哀しみや悔いがいっそう深く、聴き手の心に届いたのであった。
1971年 黒の舟歌 当時のライブ 長谷川きよし
同時代に生きる者たちばかりでなく、後に続く人たちに「黒の舟唄」が歌い継がれたのは、長谷川きよしの果たした功績が大きい。
女優の大竹しのぶが泉谷しげると歌った「黒の舟唄」
2014.10.10 佐藤 剛
「黒の舟唄」は野坂昭如によるオリジナルが1971年に発表された後、長谷川きよしにカヴァーされたことで知られるようになった。
さらには長谷川きよしの歌で知った加藤登紀子もカヴァーして巷に広まったが、’80年代に入って音楽シーンが様変わりし、昭和という時代が終わった頃には忘れられたような状態になっていた。
’90年代に入ってまもなく、この歌の存在に再び光を当てたのはサザンオールスターズの桑田佳祐だった。
ソロ・アルバム『孤独の太陽』をレコーディングしていた桑田佳祐は、1993年10月6日にアルバムに先がけて3枚目のソロ・シングル「真夜中のダンディー」発売した。
「真夜中のダンディー」はソロ・シングルとして初のオリコン・チャート1位を獲得するヒットになったが、そのカップリング曲に取り上げられたのが「黒の舟唄」だった。
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それからちょうど20年の年月を経て、昭和を背負った名曲の数々を泉谷しげるが女性シンガーとデュエットするアルバム、『昭和の歌よ、ありがとう』が企画された。
泉谷しげるから「黒の舟唄」を歌うようにと、なかば強引に言われたのは女優の大竹しのぶだった。
「昭和という時代」を強く感じさせる曲として、「黒の舟唄」はここでもう一度発見されることになる。
2013年12月30日、『第55回 輝く!日本レコード大賞』の会場となった新国立劇場では、きゃりーぱみゅぱみゅが優秀作品賞の『にんじゃりばんばん』を披露した後に、優秀アルバム賞を受賞した泉谷しげるが、大竹しのぶと一緒に登場した。
隣の泉谷しげると顔をいっさい合わせることなく、仁王立ちになって大竹しのぶが歌い始めると、会場の観客は完全に静まり返った。
それからちょうど20年の年月を経て、昭和を背負った名曲の数々を泉谷しげるが女性シンガーとデュエットするアルバム、『昭和の歌よ、ありがとう』が企画された。
泉谷しげるから「黒の舟唄」を歌うようにと、なかば強引に言われたのは女優の大竹しのぶだった。
「昭和という時代」を強く感じさせる曲として、「黒の舟唄」はここでもう一度発見されることになる。
2013年12月30日、『第55回 輝く!日本レコード大賞』の会場となった新国立劇場では、きゃりーぱみゅぱみゅが優秀作品賞の『にんじゃりばんばん』を披露した後に、優秀アルバム賞を受賞した泉谷しげるが、大竹しのぶと一緒に登場した。
隣の泉谷しげると顔をいっさい合わせることなく、仁王立ちになって大竹しのぶが歌い始めると、会場の観客は完全に静まり返った。
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