北の丸公園 2015-11-16
*初秋 茨木のり子
ジャムを煮たり
薪を買ったり
暖かな布団もふくふくに
作らなければならないし
編棒の動きも早くなり
秋がきて
水のつめたさがすてきな頃は
女たちも忙しくなる
貯えることに
忘れずあれも貯えておこう
流した涙や にがい悔恨
不正に対して闘ったささやかな連帯の
豊かな記憶・・・・・
形のない さわれもしない
多くの体験も しっかりと 心の壷に
苦労のはてに得た獲物を
あちこちの枝にひっかけたまま
すっかり忘れて鳴いている
おろかな鳥 かわいそうな鳥
百舌になんか似ないように
1958年8月31日『新潟日報』
『茨木のり子全詩集』<スクラップブック>(花神社)より
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