「アベ化する世界」 (山口二郎 『東京新聞』本音のコラム2016-05-15)
いま世界にアベ的権力者という妖怪が増殖している。世界はアベ化しているというべきか。
この妖怪には以下のような特徴がある。
第一に自己愛がきわめて強く、自分を正しい、美しいと思い込む。
第二に自己愛の裏返しで、自分に対する批判や責任追及に対しては一切耳を閉ざし、欠点を是正するという意欲を持たない。
第三に自己愛の過剰さゆえに、自分を攻撃するものに対し過度に攻撃的になる。
第四に自分が敵とみなす者を攻撃する際には、うそ、捏造も平気で行い、虚偽の主張が明らかになっても恥じることがない。
もちろん、日本はアベ化の先頭に立っている国だが、米国では同じような特徴を備えたドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補になることが事実上決まった。
フランスでは、移民排斥を唱える極右政党国民戦線の幹部が、日本の新聞のインタビューに答えて、日本の自民党こそ自分たちの手本だと語った。
民主政治の伝統を持っている国でも、人々の欲求不満に付け込んで、庶民の自己愛をくすぐり、デマで敵に対する憎悪をあおる政治家が台頭している。
アベ化を防ぐには、事実に基づく議論をすること、自分自身を的確に認識して、長所と短所をバランスよく評価することが必要である。
この夏の選挙では、日本人がどこまで知性と品性を保っているかが問われる。
(法政大学教授)
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