2015年10月20日火曜日

「公約」と「膏薬」は (『朝日新聞』2015-10-20経済気象台) : 最初の3本の矢はいったいどうだったのか、数字による検証は全くなされていない。

『朝日新聞』2015-10-20

「公約」と「膏薬」は

 アベノミクスは第2ステージに入り、「新しい3本矢」を放つという。
ターゲットは「戦後最大の国民生活の豊かさ」で、「GDP600兆円」の達成を目標として掲げる。
おまけに「ニッポン1億総活躍」だそうだ。
安保法制をめぐる大騒動などはなかったかのようである。

 しかし、ちょっと待ってほしい。
最初の3本の矢はいったいどうだったのか、数字による検証は全くなされていない。
目標とした物価上昇率2%は達成されておらず、8月などは0.1%の下落である。
株高と円安で大企業が潤ったと胸を張るが、これは経済成長によるものではない。
実態とかけ離れたバブルに近い。

 この現状を踏まえて、「デフレ脱却は目前」「日本は新しい朝を迎えた」などとどうして言えるのか。
しかも、「1億総活躍」とは。
国民全員の生活を先回りして結論づけ、逃げ道をなくして尻をたたく。
こういうブラックなメッセージは人々を意気消沈させる。

 さて、「公約と膏薬は張り替えるほと効く」とは本当によく言ったものだ。
以前になされた公約がきちんと実行されたのか、見極める前に次の景気の良い公約を打ち出す。
これが、政治家が選挙に勝ち続lナる秘訣だそうだ。
ポロが出る前に次の政策を打ち出して目先を変え、これをどんどん続けていくのだ。

 だが、国民は成長ではなく、心の豊かさや成熟を求めている。
経済的な面での「戦後最大の豊かさ」などは実現できると思っていないし、望んでもいないだろう。

 原発はどうするのか、安保法制について国民の理解をどう深めるのか。
「何とかなる」と高をくくっていると、足をすくわれるだろう。
(井蛙)




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