ロイター Column | 2015年 10月 16日
コラム:賃金上昇なき失業率低下、裏にある日米共通の構図
田巻 一彦
[東京 16日 ロイター] - 日米ともに失業率が完全雇用に近い水準まで低下しているが、教科書通りに賃金が上昇していない。日本では、雇用構造の変化で「構造的失業率」が想定されている3.5%から2%台に低下している可能性があるのではないか。
また、経済のグローバル化で付加価値の低い製品は低賃金国で生産され、単純労働(低スキル労働)の賃金は上がりにくくなっている。賃金が本格上昇するまでに日米ともさらに時間がかかると予想する。
<失業率3.4%でも上がらない賃金>
日本の8月完全失業率は7月の3.3%から小幅悪化したものの、構造的失業率(完全雇用の失業率)とみられている3.5%を下回る3.4%だった。教科書的には労働需給がひっ迫し、賃金が明確に上がり出すはずだが、どうも様子が違う。
8月毎月勤労統計(速報)によると、現金給与総額は前年比プラス0.5%と2カ月連続で増加したが、物価の変動を考慮した実質賃金は2カ月連続増となる一方で伸び率は前月の同0.5%から0.2%に縮小した。
人手不足で労働市場の需給がひっ迫し、本来ならもっと賃金が上がっていいはずなのに、何が起きているのだろうか。
<対正規35%の非正規年収>
1つは日本の労働市場が「正規社員」「非正規社員」の二重構造になっており、その年収差が大きいだけでなく、非正規社員の比率が年々増加しているという構造変化に直面していることがある。
2014年の非正規社員の雇用者数に占める割合は、37.4%と過去最高を記録した。一方、国税庁の調査によると、14年の非正規社員の平均年収は169万円と、正規社員の477万円の35%にとどまっている。
失業率は低下しても、年収の低い非正規社員の割合が増加し、正規社員の比率低下が進んで賃金増加のテンポが鈍くなるというメカニズムが働いているようにみえる。
<60%割り込む日本の労働参加率>
(略)
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