鎌倉・円覚寺 2015-12-16
*「和平より重要なもの、それはセキュリティーだ」
イスラエルの著名なインベストメント・バンカー、レン・ローゼンは『フォーブス』誌の取材に応えて、「和平より重要なもの、それはセキュリティーだ」と語っている。オスロ・プロセスの間は「皆、経済成長のために和平を求めた。だが今は暴力が成長の妨げにならないよう、セキュリティーを求めている」という。
いや、彼の本音はこうだったはずだ - 近年のイスラエル経済が飛躍的な成長を果たしたのは、国内外を対象にした「セキュリティー」ビジネスのおかげだ、と。惨事便乗型資本主義複合体が世界の株式市場を救ったように、崩壊の危機にあったイスラエル経済を救ったのは「テロとの戦い」ビジネスだったと言っても、けっして過言ではないのだ。
(いくつかの例)
・ニューヨーク警察にかかってきた電話は、イスラエルのナイス・システムズが開発した技術によって録音され、分析される。同社はロサンゼルス警察やタイム・ワーナーの通信も監視しているほか、ロナルド・レーガン空港はじめ多くの大手クライアントに監視ビデオカメラを納入している。
・ロンドンの地下鉄では、イスラエルの大手テクノロジー企業コンパースの子会社、べリント製の監視カメラが使用されている。同社の監視装置はアメリカの国防総省、ワシントンのダレス国際空港、国会議事堂、モントリオールの地下鉄施設でも使われている。同社は五〇ヵ国以上に顧客を持ち、アメリカのホームデポやターゲットといった大企業にも社員監視用カメラを納めている。
・ロサンゼルスやオハイオ州コロンバスの市役所職員は、イスラエル企業スーパーコム(ジェームズ・ウールジー元CIA長官が顧問委員会委員長を務める)が開発したICカード身分証明書を携行している。ヨーロッパのある国は同社に「電子国民カード」プログラムを依頼し、別の国は「生体認証付きパスポ-ト」の実験的導入を委託したが、いずれの政策も議論を呼んでいる。
・アメリカの大手電気会社数社が取り入れているコンピューター・ネットワークのセキュリティー・システム(ファイアウォール)は、イスラエルのテクノロジー大手チェックポイントが手がけたものである(電気会社側は社名の公表を避けている)。同社によれば「『フォーチュン500社』の八九%がわが社のセキュリティー・システムを使っている」という。
・二〇〇七年のスーパーボウル開催を前に、マイアミ国際空港で働く者は全員、「行動パターン認識」と呼ばれる心理システムを使った「怪しい物だけでなく怪しい人物」を見分けるための研修を受けた。このシステムはイスラエルのニューエイジ・セキュリティー・ソリューションが開発したもので、同社のCEOはかつてベン・グリオン空港のセキュリティー部門の責任者。
ボストン空港、サンフランシスコ空港、グラスゴー空港、アテネ空港、ロンドン・ヒースロー空港をはじめ世界の多くの空港が、こうした搭乗者プロファイリングの研修を空港労働者に受けさせるために同社と契約している。
空港以外でもナイジェリアのニジェール川流域の紛争地帯の港湾職員、オランダ司法省職員、「自由の女神像」の警備員、ニューヨーク市警のテロ対策局員なども同社の研修を受けている。
・ハリケーン・カトリーナ以後、ニューオーリンズの高級住宅地オーデュポン・プレースは自警組織の導入を決定、イスラエルの民間セキュリティー会社インスティンクティブ・シューティング・インタ-ナショナルと契約した。
・カナダ連邦警察職員は、警察官と兵士の訓練を専門とするインターナショナル・セキュリティー・インストラクターズ(本社アメリカ・ヴァージニア州)の研修を受けた。同社のインストラクターは「イスラエル国防軍、イスラエル国家警察対テロ部隊、イスラエル総保安局〔イスラエルの秘密警察〕などの(中略)特殊部隊での経験を積んだベテラン」で、「イスラエルの厳しい状況で得た体験」をセールスポイントにしている。同社の顧客リストにはFBI、米陸軍、海兵隊、海軍特殊部隊、ロンドン警視庁などが並ぶ。
・二〇〇七年四月、メキシコ国境警備に従事する米国土安全保障省の移民担当特別職員はゴラン・グループの八日間集中訓練コースに参加した。同社はイスラエルの元特殊部隊将校らによって設立され、世界七カ国に三五〇〇人以上の社員を持つ。同社の事業部責任者トマス・ピアソンによれば、このコースは「イスラエル方式を取り入れた」もので、素手での戦いから射撃訓練、そして「SUV車を使った積極的なアクション」まであらゆる訓練を行なう。本社は現在フロリダ州にあるが、イスラエル仕込みのノウハウを売り文句にしており、ほかにX線機器や金属探知機、ライフル銃などの製造も手がける。顧客リストには各国政府や有名人のほか、エクソン・モービル、シェル、テキサコ、リーバイス、ソニー、シティ・グループ、ピザハットなどの大手企業も名を連ねる。
・イギリスのバッキンガム宮殿はセキュリティー・システムの刷新にあたり、イスラエル企業で「防御壁」の建設にもっとも大きく関わった二社のうちのひとつであるマガールに新システムの設計を依頼した。
・メキシコとカナダとの国境に「バーチャル・フェンス」を建設する国土安全保障省の二五億ドルの大プロジェクト(電子センサー、無人偵察機、監視カメラ、それに一八〇〇カ所の監視塔まで完備したもの)を受注したボーイングの主要なパートナーの一社は、イスラエルのエルビットである。同社は「防御壁」に大きく関わるもうひとつの企業であり、この「イスラエル史上最大の建設プロジェクト」の総コストもまた二五億ドルだ。
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