2015年12月13日日曜日

「倚(よ)りかからず」 (茨木のり子 詩集『倚りかからず』より) : もはや できあいの思想には倚りかかりたくない ・・・ じぶんの耳目 じぶんの二本足のみで立っていて なに不都合のことやある

 
2015-12-11 横浜市内


倚(よ)りかからず         茨木のり子


もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくはない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある

倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ


          詩集『倚りかからず』(1999年10月)より


茨木のり子さん、2006年2月に79歳でなくなられているので、この詩は、作者70歳を越えたときのもの。
「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」もカッコ良かったけど、この詩もなかなかカッコ良い。
が、反面、何もそこまでムキにならなくても、頑張らなくても、という気もする。
ストレス溜まる生き方かもしれない。

但し、最終節までじっくり読むと、また違う味わいが出てくる。

「最終節に至って、読者ははぐらかせられ、成熟した詩人の人生への真の詠嘆に耳を澄まさなければならない」(中村稔「哀悼・茨木のり子」『現代詩手帳』追悼号)というとらえ方もある。




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