2015年12月11日金曜日

「自分の感受性くらい」 (茨木のり子 詩集『自分の感受性くらい』) ; 自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ

六義園 2015-12-09

自分の感受性くらい      茨木のり子


ばさばさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難かしくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ


          『自分の感受性くらい』(花神社、1977年3月)

きついワードが並んでいる。
こういうのは、読むの年一回くらいでいいかな。
忘れない程度に。

ただ、作者はこう言っているそうだ。
「自分のこととして書いたのに、他者への叱咤激励と読みとられることが多かったのは、不徳のいたすところです」(「詩のうしろ」、『広告批評』1980年2月)。
確かに、「なにもかも下手だったのはわたくし」とある。

できないことを、他者への責任転嫁でゴマカス「ばかもの」にはならないよう、年に一度は読むことにするかな。


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