六義園 2015-12-09
自分の感受性くらい 茨木のり子
ばさばさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難かしくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
『自分の感受性くらい』(花神社、1977年3月)
きついワードが並んでいる。
こういうのは、読むの年一回くらいでいいかな。
忘れない程度に。
ただ、作者はこう言っているそうだ。
「自分のこととして書いたのに、他者への叱咤激励と読みとられることが多かったのは、不徳のいたすところです」(「詩のうしろ」、『広告批評』1980年2月)。
確かに、「なにもかも下手だったのはわたくし」とある。
できないことを、他者への責任転嫁でゴマカス「ばかもの」にはならないよう、年に一度は読むことにするかな。
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