北海道新聞 社説
秘密保護法 道民の意思は「ノー」だ(12月19日)
機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法に対する道民の反発が、いかに強いかが明確に示された。
北海道新聞社が実施した全道世論調査で、反対は7割を超え、「修正すべきだ」と「廃止すべきだ」が合わせて90%に達した。「修正」「廃止」が80%強だった全国世論調査を上回る数字だ。
秘密の範囲があいまいなうえ、政府に都合の悪い情報が隠される恐れもある。国民の知る権利が侵害される懸念の大きさを考えれば、当然の結果だろう。
安倍晋三内閣の支持率も、発足後初めて50%を割り込み、43%にまで落ち込んだ。政府・与党の強引な国会運営と、タカ派的な政策推進への不安が背景にあるのは間違いない。
法は公布されたが、施行までにはまだ時間がある。政府は道民の意思に真剣に応えるべきだ。
道内選出の国会議員も道民の思いを重く受け止め、施行を思いとどまるよう、政府に強く働き掛けなければならない。
特定秘密は、防衛や外交、スパイ活動の防止が主な対象分野となる。
道内には自衛隊基地が数多く存在しているため、道民が法と関わるケースは容易に予想される。
自衛隊が関係する事件や事故の真相が、特定秘密に抵触するとして、明かされない場合も十分考えられる。あってはならないことだ。
陸上自衛隊矢臼別演習場は、沖縄駐留米軍の実弾射撃訓練を受け入れている。6月には砲弾誤射事故が発生し、地元住民の怒りを買った。
航空自衛隊千歳基地では米軍との共同訓練が実施されている。
17日に政府が閣議決定した新防衛大綱は、島しょ部防衛などに対応する新設の作戦基本部隊の半数を道内に置くことを明記した。
陸上自衛隊が新たに導入するオスプレイの訓練が、道内で行われる可能性も現実味を帯びる。
日々の平穏な生活を守るため、訓練の監視を続ける周辺住民もいる。現状でさえ、防衛に関する情報を得るのは困難だ。法が施行されれば、情報収集どころか、監視する住民が逮捕される危険すら出てくる。
道民の基本的人権が軽んじられることは許されない。
同法成立後も、渡島管内森町や空知管内南幌町、後志管内余市町の各議会で、廃止や凍結を求める意見書が相次いで可決された。政府への不信がいかに大きいかの表れだ。
札幌では市民による反対のデモが繰り返し実施され、その規模は日増しに大きくなっている。
地方から声を上げ続けることが、悪法の廃止につながる。道民は諦めてはいけない。
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