江戸城(皇居)東御苑 2014-05-07
*明治37年(1904)
7月17日
・ウラジオ艦隊、津軽海峡経て太平洋でゲリラ的活動。~30日迄。
この日、イエッセン少将指揮巡洋艦3隻、第6回ウラジオ出撃。
20日午前3時30分、津軽海峡侵入。午前5時30分函館沖通過。午前6時貨物船「高島丸」と遭遇。乗員退去後沈没。午後4時頃帆船「喜宝丸」を乗員退去後撃沈。
同じ頃、帆船「来生丸」も撃沈。22日午前10時30分頃ドイツ汽船「アラビア」拿捕、ウラジオに回航させる。
24日午前8時10分頃御前崎沖を過ぎたところでイギリス船「ナイトコマンダー」撃沈。午後3時頃「自在丸」「福就丸」撃沈。
25日午前9時20分頃、野島崎南方でドイツ船「テア」撃沈。午前9時50分頃イギリス船「カルロス」拿捕、ウラジオに回航させる。ここで、帰港司令。
合計12隻を臨検、撃沈7、拿捕2、解放3。
大本営は、このウラジオ艦隊が太平洋岸から南シナ海~黄海を経て旅順艦隊と合同すると読み、24日午後1時、上村率いる第2艦隊に宮崎県都井岬に急行するよう指示。
東郷司令長官はウラジオ艦隊が津軽海峡を西航すると読み、上村には津軽海峡西口に直進を命じる。
東郷の司令は既に都井岬への航海上で受領、上村は大本営指示に従う。ウラジオ艦隊は大本営の誤判断に救われることになる。
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7月17日
・週刊『平民新聞』第36号発行。
「朝鮮併呑論を評す」
「吾人は近刊の新聞雑誌に於て朝鮮に関する有力なる二論文を見たり 即ち左の如し
▲『韓国経営の実行』『韓国経営と実力』(国民新聞社説、七月八日、十二日)
▲『朝鮮民族の運命を観じて日韓合同説を奨説す』(新人第七号社説)
『国民』の徳富氏が如何に今の政府及び軍人に親しきかを知り、『新人』の海老名氏が如何に今の青年の一部に持(も)て居(を)るかを知る者は、吾人が此二論文を批評するを見て、決して無用の業と為さざるぺし
国民子先づ『韓国経営の実行』に於て日く
・・・・・
鳴呼『日韓議定書の精神』とは何ぞや、・・・国民子は其最後に於て、韓国を『我国の保護の下に』置くべきを言へり。」
「而して国民子更に共『韓国経営と実力』の冒頭に於で日く
・・・
鳴呼『韓国の領土保全』乎(か)、『独立扶植』の警語は何時の間にやら消え失せたるこそ笑止なれ、既に保護国と云ふからは独立の二字は余り声高に語り得ざる筈也、清盛の甲(よろひ)は弥々(いよいよ)多く法衣(ころも)の裾より現れたり、両も其『領土保全』を説明するや亦更に甚だしきものあり、日く
・・・
清盛は既に自ら其法衣を脱ぎ棄てたり、実力とは、即ち兵力の事也、領土保全とは明かに領土併呑の事也、此に至つては独立も保護もあつたものに非ず、世の義戦を説く者、世の『韓国の独立扶植』を説く者、之を読で果して何の感あるか」
「次に吾人をして新人子に聞かしめよ、新人子は『日清戦争の当時、日本軍が朝鮮独立の為に出征したるを喜び、日本帝国を東奔酉馳して愛隣の大義を完(まつた)うせんことを論じた』る人なり、而して『近頃宇内の大勢と東洋の形勢に深く感激する所あり、韓国民族に一片の忠言を呈』して曰く
・・・
鳴呼狼は法衣を着すましたり、保護国は不可也、属国は不可也、両も只『合同』と称すれば甚だ可也、合同平、合併乎、併呑平、『実なきの名は君子の恥づる所なり』とせば、吾人は韓人が、無実の合同を為さんより『寧ろ滅亡するに如かず』と言はんことを恐る。此点に於で吾人は寧ろ国民子の露骨を愛す、新人子更に曰く
・・・
吾人の見る所を以てすれば、日本民族が如何に異民族に悪感を懐き居るかは、彼れが識ゆる新平民に対することにでも明白也、日本人が如何に韓人を軽蔑し虐待せるかは、心ある者の常に憤慨せる所に非ずや、韓人が日本人と合同せんとする事あらば、そは合同に非ずして併呑也、韓人は到底使役せられんのみ、・・・
・・・」
「見よ、領土保全と称するも、合同と称するも、其結果は只ヨリ大なる日本帝国を作るに過ぎざることを、又見よ、今の合同を説く者も、領土保全を説く者も、同じく曾て韓国の独立扶殖を説きたる者なることを、然らば則ち将来の事亦知るべきに非ずや、要は只其時の都合次第に在り
斯くて吾人は此の有力なる二論文が、或は法衣を脱ぎ、或は法衣を纏ひ、或は表となり、或は裏となり、或は威(おど)し、或は騙(すか)し、百方苦心、韓国滅亡の為に働きつゝあるを見たり、而して吾人は又日本の浮浪の輩が斯の如き論議を背後に負ひて或は長森案を韓廷に提出し、或は塩専売権、或は煙草専売権、或は仁川埋立工事、或は水田買収計画等に奔走し居るを見たり、日本が文明の為に戦ひて東洋諸国を指導すと謂ふものゝ其の公明正大なること一に何ぞ此に至るや」*
7月17日
・福岡県三池炭鉱万田坑の坑夫、待遇改善を要求してストライキ。
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7月19日
・東京市会、市街鉄道上等車反対建議案を内務大臣に提出する案可決。
東京市街電車の階級制:
東京市街鉄道は、乗客増加に応ずるため連結車の計画を立てて試運転中であったが、内務省は「連結車を運転する場合は一台を普通車、一台を上等革とすべし」との意向を示し、会社は「それなら現行の三銭均一制を五銭に改めたい」と申し込んだ。その理由は、「電車乗客の多数は下等社会で不作法なるがため上流の子女はつねに不快に耐へないから、別に上等車を設けて上流の需用に応ずるにある」とした。
これにはさすがに輿論の反対が激烈を極め、安部磯雄は『二六新聞』紙上に、
「アメリカのやうな民主主義国では汽車にも上中下の区別を設けてゐない、まして短距離の交通機関にまで階級を設けるやうな文明国がどこにある? 貧乏人と同車するのを厭ふ紳士淑女は馬車を雇ふなり、人力車を抱へるがよい。」
と論じ、島田三郎の『毎日新聞』は、
「乗客が多いというのは電車が少ないことではないか。内務省は会社に厳命して電力と車輛を増さしむべきである。会社が自己の設備不足を度外視して、乗客を賃銀によって制限せんとするが如きは不当も甚だしい。」
と論じ、また根本正は、
「階級制度の行はれる国は真正の文明国でない、……わが国の新制度新事物中、もっともよく文明の名に値するのほ電車である。一国をして一電車の如くならしめよ、その電車に上下貴賤を区別せんとする如きは奇怪千万といふべし。」
と論じる。
この日、東京市会で佐治実然議員(平民社相談役)が緊急動議として、市街鉄道上等車反対の建議案を内務大臣に提出する件を上程し、市会はこれを可決した。
ただ、福沢諭告『時事新報』のみは、電車の階級制度問題に対して賛意を表している。
「中等以上の市民は車内混雑の折、見苦しき服装の職工土方等と併坐して不快に耐へざる場合少なからず、欧米諸国における如く下層人民が自ら分を知り客車の屋上か、又はその一隅に坐して自然中流以上の乗客と区画をなすの風習あり、その上に車掌が厳格に服装を甄別(けんべつ)しその見苦しき者はドシドシ乗車を拒絶する場合には、均一制の市街鉄道にて何等の差支へなけれども……」
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