2026年5月9日土曜日

五月の風は なぜか私を羞恥にそめる 人間のつくるものは 鼻唄まじりどうしてこんなに雑なのだろう (茨木のり子「五月の風は」 /「スクラップブック」から )

 


五月の風は       茨木のり子


一年の歳月を耐えしのんでいたものが

いっせいに花びらく眩しさ

五月の風は

なぜか私を羞恥にそめる

人間のつくるものは

鼻唄まじりどうしてこんなに雑なのだろう

ひとむらの

わすれなぐさの花のいろ

それさえ長い月日をかけて水色に咲きこぼれ

ちり紙のように使いすてた

わたしの一日一日は

蕉風のなかにひらひらあらわれ

みっともなく照れている


「スクラップブック」から







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