京都新聞 社説
臨時国会閉会 首相いいなり、よいのか
55日間の会期を終え、8日に閉会した臨時国会は二つの点で戦後日本の憲政史上に残るだろう。
一つは、平和国家の歩みを転換する危険を有した特定秘密保護法の成立である。そして、法案をめぐり、国会が築いてきた最低限のルールまで壊し、数の力で審議を蹴散らした政府・与党の手法である。この2点は、安倍晋三政権の強権的な本質を表している。
われわれは憲政の汚点ともいえる今回の事態を胸にとめ、政権の行方を注視する必要がある。
臨時国会が開会した10月15日には、秘密保護法案は提出されていなかった。短い会期設定に、多数の法案を出した上で、首相は「成長戦略実行国会」と位置づけた。まるで目くらましである。
秘密保全法制の議論は長くあったが、衆参院選で与党公約にはなかった。10月25日に閣議決定された法案は、秘密指定の手法や分野、期間などで、あまりに官僚の裁量が大きく、野放図に秘密を増やし、人権を脅かす内容だった。
野党の追及に、担当大臣は立ち往生し、答弁の修正と撤回を繰り返した。その傍らで、与党と一部野党は法案を修正し、国会審議をないがしろにした。修正法案はろくに質疑もされず、46時間の審議で採決が強行された。
参院はさらにひどい。「審議時間は衆院の最低7割」としてきた「良識の府」のルールを打ち捨て、半分に満たない22時間で質疑を打ち切った。野党の委員長を解任したり、地方公聴会を前日に決めたり、「第三者機関」として次々と官僚組織設置を言い出すなど、ずさんと横暴が目に余った。
審議入りから1カ月、時間にして70時間足らずの成立は、過去の重要法案と比べても、異常な短さだ。昨年の消費税増税法案は200時間以上の審議を行った。
秘密保護法の騒動の陰で、政府提出法案は約9割、27本が成立した。社会保障の負担増を定めたプログラム法など、国民に痛みを強いる重要法も駆け足で通過した。
一連の強引な国会運営は首相官邸の強い指揮で進んだ。高い内閣支持率の前に、自民党内も連立を組む公明党も沈黙した。「多弱」の野党は足並みがそろわなかった。
臨時国会の法成立を受けて発足した国家安全保障会議(日本版NSC)を司令塔に、首相は来年の通常国会以降、集団的自衛権の行使容認や武器輸出解禁を狙う。その先に憲法改正を視野に入れる。
今回のような首相いいなりの運営を再び許しては、国権の最高機関の名が泣く。与野党とも行政府を監視する立法府の責務を果たさねば、必ず国民の信を失う。
[京都新聞 2013年12月10日掲載]
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