2014年5月20日火曜日

PC遠隔操作事件:すべての謎が解けたあとに残るもの(八木啓代のひとりごと)



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さて、これは私自身が記者会見でも質問したことだが、弁護団が、片山氏が犯人ではないのではないか、警察・検察が暴走しているのではないか、という論理的な疑惑を持った最大の理由は二つある。

 ひとつは、警察・検察から、事実と異なるリークがマスコミに対して積極的になされていたことだ。
 それは、具体的には「江ノ島の猫に首輪をつける決定的な瞬間を捉えた監視カメラの映像がある」というものと、「FBIとの捜査協力で、Dropboxから片山氏がウイルスを作っていた決定的な証拠が見つかった」というものだ。

 この2点を、実は捜査当局はマスコミに流し(実際に一部報道されている)、そのことをもって、「片山冤罪説など書くと、とんでもないことになるぞ」と脅しをかけていたのである。
 この事実は、私は、複数の司法記者や警察記者から聞いて知っている。

 一方で、早い時期から弁護団は、検察側に「堅い証拠があるなら見せてほしい。それであるなら、ちゃんと片山氏を説得し、有罪を受け入れるようにするから」と申し出ている。しかし、そのような証拠を検察は、一切出してこなかった。

 これは矛盾である。

 もう一つ。検察は再逮捕を繰り返し、片山氏を1年以上も接見禁止で拘束した。いわゆる、絵に描いたような人質司法である。そして、驚くべきことに、その間、片山氏の取り調べを行っていない。弁護団は、可視化に応じるならという条件で、取り調べに同意していたのだが、検察は、可視化に応じないで取り調べを拒否していたのである。
 検察にやましいことがなく、かつ、決定的な証拠があるなら、可視化した取り調べで片山氏に、その証拠を突きつければすむだけの話だ。
 それができないということは、そもそも、決定的な証拠などないのではないか。また、取調べの可視化を断固として拒否するのは、「可視化されたら困る理由が検察にある」からではないのか、というのは、誰でも抱く疑問だ。

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 しかし、決して公判が不利ではなかったにもかかわらず、何故、この時期に、河川敷にスマホを埋めるようなことをしたのか。それは、ほかならぬ母親が、自分に疑いを持っていることに気づき、裁判から早く逃れて2人で暮らしたかったからだという。
 本当は、万一有罪になったら、収監後に送るつもりだった真犯人メールを早めたのが、母親の安心させたかったためというのが、なんとも幼い。その幼さは、犯行の一方での周到さと、その反面、スマホが発見されることをまったく考えていなかったという幼さともつながる。
 今日、弁護士から検察公判部に連絡をし、迎えに来た検察官に身柄を渡される間も終始平静だったが、お母さんから「真犯人であっても受け入れる、帰ってくるのを待っている」というメールを見て、ちょっと涙を見せたようだったという。

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