日経BP 小田嶋隆のア・ピース・オブ・警句
安倍政権支持率回復の理由
2015年11月13日(金)
(略)
いつだったか、政治学者の中島岳志さんが例として引いていたこんなエピソードがある。
小泉内閣の時代、時の首相として靖国神社参拝を明言する小泉さんの行動について、その賛否を問う世論調査が行われた。参拝前の調査では、不支持が支持を上回っていた。ところが、反対の声を押し切って小泉さんが参拝を果たした後に、その参拝についての評価を問うてみると、結果は「良かった」が「良くなかった」を上回る結果となった。
つまり、参拝前は、首相の靖国参拝を「望ましくない」と考えていた同じ国民が、実際に首相が参拝を終えてみると、その参拝の是非を問う質問に対して「良かった」と答えたわけだ。
われわれは、「起こってしまったこと」には、反対しない傾向を備えた国民だ。
それ以上に、「いまこうしてこうあること」には、ほとんどまったく疑問を持たない。
なんというのか、私たちは、現状肯定的な国民なのだ。
あるタイプの犬は、それがどんな過酷な場所であっても、自分が今住んでいる住み処を「自分にとってかけがえのない唯一の最も居心地の良い場所だ」と思い込む強い傾きを生まれつき持っているのだそうだが、私たちは、どこかしらその犬に似ているのかもしれない。
(略)
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