政権としての発言
2014年2月21日
「数のおごり」許されぬ
衆参両院で過半数の議席を占めたことを背景として安倍晋三首相や周辺の発言に、おごりや強引さが目立ち始めている。
安倍首相は衆院予算委員会での集団的自衛権をめぐる答弁において、自身や政権が選挙で国民から審判を受けた点を強調した。その上で「今までの積み上げそのままで行くのなら、そもそも有識者会議をつくる必要はない」などとして、憲法解釈の変更へ意欲をにじませた。
また、衛藤晟一首相補佐官は安倍首相の靖国神社参拝に対して「失望した」との声明を出した米国政府に向け、「こちらこそ失望した」とする見解を動画サイトへの投稿で表明した。同補佐官は投稿を削除し発言を撤回したが、その内容については「個人的見解」としている。
集団的自衛権についての首相の発言からは、選挙に勝ちさえすれば憲法の拡大解釈や解釈変更が可能になるとの思惑がのぞく。国務大臣や国会議員らに対し「憲法を尊重し擁護する義務を負う」と定めた憲法第99条に反する疑いも生じかねない。
衛藤補佐官は投稿において、訪米時に米国側の要人に首相の靖国参拝への理解を求めたことなど、公的な経過も明かしている。「個人的」との釈明は通るまい。
自民党の石破茂幹事長が市民デモを「テロ行為」呼ばわりして問題となったのはつい最近だ。おごりは同党から政権へと伝染しつつある。
さらに心配なのは首相や衛藤補佐官の発言が「問われたから答えた」といった消極的な経過ではなく、自ら積極的に行われている点だ。
首相の答弁は求められたものではない。内閣法制局と野党議員との質疑に「政府の最高責任者は私だ」と割って入り、持論を展開した。衛藤補佐官に至っては不特定多数に公開されるサイトへの投稿である。
特定秘密保護法をめぐっては、内容に加え成立過程も問題となった。その施行が迫っている。消費税増税、介護保険制度の見直しなど生活への影響の大きい課題も続く。
国民の不安を解消していく責務を政権は負う。さまざまな意見に謙虚に耳を傾け、問題解決を進めていく態度こそが必要だ。
今回、指摘した問題は求められる姿勢とは真逆だ。「言い過ぎ」「失言」という範囲にはとどまらない。数を頼みの強引な発信を国民は決して望んでいない。為政者は心すべきだ。
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