財経新聞
塩崎厚労相、一生派遣が生まれる危険否定せず
2014年11月1日 22:08
政府提出の労働者派遣法改正案の実質審議入りを前に、31日、与党の公明党から『修正案』提出が衆院厚生労働委員会理事会に提起されたため、野党からは、与党側から修正案が出されるのは政府案に欠陥のあることを与党が認めたことになると指摘され、公明党は修正案提出の発言を撤回したいとしたが、野党は欠陥閣法(欠陥のある政府提出法案)とされたものを審議できない。政府は審議できる政府案を出し直すべきだと反発。31日に予定された衆院厚生労働委員会は開かれなかった。
法案の取り扱いや審議は連休明け4日に理事懇談会を開き、公明党の見解を聞いたうえで、日程などを再協議するという。
実質審議入り前に与党側から閣法の修正案が提起されるのは異常だが、ここは修正案を申し出た公明党の勇気を評価したい。(筆者は特定政党の支持者ではない)。欠陥が見えれば修正すべきで、法案は派遣で働く者の視点で点検、修正していくべき。弱者の立場をいかに理解し、保護し、強者をいかに制御するかが視点として大事だ。
公明党の井上義久幹事長は31日の記者会見で修正案に対する記者団の質問に「私が報告を受けているところでは、野党の中でも、連合からも様々意見があるので、出来るだけ幅広い合意をつくることが良いのではないかということ」。
「連合や野党の一部のみなさんの主張も踏まえて、閣法の中で、どういうことが考えられるのか、幅広い合意を得るための一環として提案しているということだろう」と語った。
一方で、「今国会で閣法の成立を期すというのが与党の方針」とし、その意味からも出来るだけ幅広い合意を得るための対応が必要で「ぎりぎりまで努力すること」との考えを示した。
その労働者派遣法の改正。最低限、法的に担保されるべき案件がいくつかあるが、最も必要なのは「同一労働同一賃金」。そして、派遣は臨時的なものであるべきで、雇用の安定と所得の安定のため正規労働者への道をいかに開いていくかということ。
10月30日の塩崎恭久厚生労働大臣と社民党・福島みずほ副党首との参院厚生労働委員会のやりとりを福島副党首は自らのホームページで紹介しているが、政策通で切れ者の塩崎氏らしからぬ答弁が続いている。最後には、福島副党首から「何か塩崎大臣は、良いところもあるけれど、労働法制になるとからっきし駄目ですね」と面と言われる始末。派遣社員10人程度を国会に参考人招致し、その実態を塩崎大臣や安倍晋三総理らに知って頂く必要がありそうだ。
ふたりのやり取りの一部からも、改正案の欠点や問題が平易に浮かび上がってくる。福島副党首が「派遣元で、無期雇用で一生雇われる、そんな事態が広がるのじゃないでしょうか」と追及する。
塩崎大臣は「非正規雇用労働者が結果として更に拡大するだけじゃないかというようなことかなというふうに受け取りましたが、我々としては派遣労働者を始めとする非正規労働者が増えるかどうかという議論より、派遣労働者の待遇とか立場をどう改善していくのか、正社員を始め派遣以外の働き方を希望する方についてはその道が開かれるようにするにはどうしたらいいのかということを考えることの方が前向き」と質問に答え(?)、懸念に答えていない。
福島副党首が「同一価値労働・同一賃金も書いていなくて、何で待遇が良くなるのですか。派遣元で一生派遣を可能とすれば、その人は正社員になれないじゃないですか。派遣元で無期雇用であれば一生派遣が可能だから正社員になれないですよ。ずっと派遣ですよ、一生、どこに勤めても。どうしてこういう制度を導入して正社員が、というか、非正規雇用が増えないと言えるのですか」と追及したのに、塩崎大臣は「それぞれがどういう働き方を選択するかということで、増えるかどうかということは結果として分かることで、どういう選択をされるかというのは結果として出てくる話であるというふうに思います」と無責任極まりない答弁。働く側と雇用側の力関係が現実社会で全く対等な状況にあるとでも理解しているかのようだ。
福島副党首は「3年置き、課を変えれば、人を替えれば、派遣が可能ですね。私、福島みずほ、もう一人、Bという女の人がいる。そして、課を変えれば、人事、総務、人事、総務、3年置きに変えたら、私、一生そこで人事やって、総務やって、人事やって、総務やって、一生派遣じゃないですか。会社はずうっと派遣を雇えるのですよ。私はもっといい労働条件で働きたい、正社員になりたいと思っても、一生派遣ですよ。そうなるでしょう。」
塩崎大臣は「もちろん先生が御指摘のように、課を変えればということはございますけれども・・・」と正社員への希望を絶たれ、一生派遣の労働者が生まれる危険を否定しなかった。
福島副党首は「根本的に欠陥があるのは正社員の道を閉ざす」ところだとし「どの制度も実効性がない。意見聞くぐらいだったら誰だってできる。意見聞いて駄目ですといったら、それで終わり。労働者に権利を与えなければ働き続けることができない」と政府案を指摘した。
このやりとり、じっくり検証頂きたいと思う。こうした危険性を解消し、危険を封じる対策を法的に担保することこそ、派遣労働者を守り、正規労働者を増やし、所得の底上げが図れることになる。6日に衆院を通過させ、今国会での成立を是が非でもとの政府・与党の姿勢は「まさに修正すべき」ところにきている。強行すれば、その答えは来年の統一地方選、次期衆院選に確実に跳ね返るだろう。(編集担当:森高龍二)
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