2014年11月24日月曜日

北海道新聞 社説 <2014衆院選> 集団的自衛権の行使 戦争できる国にするのか(11/23) : 「民意を無視した手法をこれ以上、許してはならない。」 「首相が衆院選で勝利し、政権を維持すれば憲法改正による国防軍の創設も視野に入ってくる。」

北海道新聞 社説 
<2014衆院選> 集団的自衛権の行使 戦争できる国にするのか(11/23)

 民意を無視した手法をこれ以上、許してはならない。集団的自衛権行使容認の閣議決定のことだ。真に日本の安全を守ることにつながるのか。今回の衆院選で、国民は厳しい目で見極める必要がある。

 中国の軍事的台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発など東アジアの安全保障環境の変化に対処するため、安倍晋三政権は従来の憲法解釈が禁じてきた集団的自衛権行使を認めて日米同盟を強化し、抑止力を高める道を選んだ。

 現在、米国政府と再改定作業を進めている日米防衛協力の指針(ガイドライン)では、行使容認を反映させ、自衛隊が世界各地で米軍と共に武力を使えるようにする方向だ。

 専守防衛を柱とする戦後日本の安保政策の大転換であり、本来は閣議決定前に国民の信を問うべき重大テーマである。

 ところが国会での議論さえ十分に行わず、関連法の整備も統一地方選への影響を考慮して来年の通常国会後半に後回しするという。こんな争点外しは認められない。

■世界中で米国に協力

 集団的自衛権は同盟国などが攻撃された際、自国への攻撃がなくても一緒に反撃する権利である。

 国連憲章51条は主権国固有の権利と認めているが、日本政府は憲法9条に照らし、「国を防衛するための必要最小限度の範囲を超える」として行使を禁じてきた。

 安倍政権が行使を容認したのは、国際社会における米国の相対的影響力が低下する中、中国などに対抗するため、日本が従来より踏み込んで米国の軍事力を補完する役割を担うためである。

 ガイドラインの中間報告では、これまで事実上、日本周辺地域に限定してきた自衛隊の活動範囲について地理的制約を取り払い、世界中どこでも米軍に協力する体制を整える方針を明確にした。

 自衛隊が米国の戦争に巻き込まれたり、日本が報復攻撃の標的になったりする恐れはないのか。抑止力強化は軍拡競争を招き、日本の安保環境は逆に悪化しないか。

 首相はこうした疑問にこれまで正面から答えていない。明確に説明すべきだ。

■集団安保にも道開く

 閣議決定では、集団的自衛権行使に当たり、「国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」などの武力行使の3要件を満たす必要があるとした。

 首相はこれによって行使は限定的だと強調する。だが何をもって「明白な危険」と判断するかはあいまいだ。行使は時の政権の解釈次第で、歯止めはないに等しい。

 さらに首相は、国連決議に基づく武力行使を伴う集団安全保障への参加も、3要件を満たせば可能との見解を示している。集団安全保障は閣議決定で一言も触れていない。あまりにも乱暴である。

 そもそも安倍政権が憲法解釈変更の根拠とした1972年の政府見解は結論で「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と明記している。首相は、この見解の一部を都合よくつまみ食いして、結論だけを正反対に変えてしまった。

 一内閣の勝手な判断で解釈変更が許されるなら、国民の基本的人権や自由を守るため国家権力を縛る最高法規としての憲法は、その意味を失ってしまう。

 今後の手順にも問題がある。

 ガイドライン再改定を先行させ、自衛隊法などの関連法改正案は来年の通常国会後半で成立させる段取りだ。

 再改定での米国との約束によって集団的自衛権の行使容認を既成事実化した上で、関連法を整備するのは順序が逆である。

■民主党は立場明確に

 今回の衆院選で、自民党は集団的自衛権の問題を争点から外すことを画策し、「平和の党」を自任する公明党も同調している。

 山口那津男代表は当初、集団的自衛権に「断固反対」と明言し、解釈改憲を批判していたはずだ。なぜ行使容認に転じたのか納得いく説明をしてほしい。

 性急でずさんな閣議決定を反映し、与党間では中東海域での機雷除去などに関し見解が食い違っている。どんな事例で行使を認めるか統一した具体像を示すべきだ。

 気がかりなのは野党第1党の民主党である。行使容認派を党内に抱え、立ち位置が定まっていないため、これまで首相にいいように主導権を握られてきた。

 ことは国の行方にかかわるテーマだ。公約にきちんと見解を掲げ、議論を戦わせる必要がある。

 首相が衆院選で勝利し、政権を維持すれば憲法改正による国防軍の創設も視野に入ってくる。

 首相は日本を平和国家から戦争をする「普通の国」に変えてしまうつもりなのか否か、はっきり語らなければならない。





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