2013年7月30日火曜日

輝きを失いつつあるアベノミクス(WSJ)

WSJ 2013年 7月 30日 08:47 JST
輝きを失いつつあるアベノミクス
By NICK HASTINGS

 結局、日本の奇跡的な復活策はうまくいかないかもしれない。

 そして 投資家の間では不安感が日に日に増している。

 かつて日本経済の救い手と見られていたアベノミクスが期待通りの効果を上げられないのではないかという見方が強まるなか、日経平均株価は29日、先週末終値から3.3%下落、円高も進行した。

 これまでは全てが順調のように見えた。

 安倍晋三氏は昨年12月の首相就任以来、大規模な金融緩和策を推進。その結果、急激な円安がもたらされるとともに、日本経済が復活に向けて下支えされた。

 ようやくデフレに終止符が打たれたように見え、さらに約1週間前の参院選で安倍氏率いる自民党が圧勝したことで、ねじれ国会が解消。安倍政権は、持続可能な経済回復に不可欠と思われる構造改革を大きく推進できる舵取りに成功したかのようだった。

 しかし、思い通りに事は運んでいない。

 総務省が26日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は前年同月比0.4%上昇。前年同月比でプラスになったのは昨年4月以来14カ月ぶりで、上げ幅は08年11月以来最大となった。

 日銀が2年後のインフレ目標を2%とする中で、 表面上、これはアベノミクスにとって記念すべきことのはずだ。

 ただ、実際はそうではなかった。

 物価を押し上げたのは主に輸入エネルギー価格の上昇だった。これは最近の円安の効果と言えよう。

 賃金が上昇していないことを考えると、輸入エネルギー価格の上昇は一般消費者や景気にとって良いニュースではない。これを反映するように、経済産業省が29日発表した6月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は前年同月比1.6%と、1.9%という予想に達しなかった。

 実は安倍首相自身が、アベノミクスが予想通りの成果を上げていないと投資家に懸念を抱かせる要因の一つなっている可能性がある。

 報道によると、消費税を現行の5%から10%に引き上げるための2段階増税案について、首相はその代替案を求めているという。増税が景気に影響を及ぼし、経済回復の強さを測る試練となるは間違いない。

 だが、安倍氏が増税で妥協案を模索するようなことがあれば、その過程で投資家の信頼感が弱まるだけでなく、アベノミクスの有効性を疑う見方さえ生じかねない。

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