2013年8月8日木曜日

福島第一原発 原子炉建屋周辺での遮水壁 両刃の剣 建屋から逆流の恐れ

東京新聞
遮水壁 両刃の剣 建屋から逆流の恐れ    
2013年8月8日 朝刊

 東京電力福島第一原発の汚染水対策で、政府が国費投入を検討している原子炉建屋周辺での遮水壁建設は、実は大きなリスクを抱えている。建屋地下にたまる高濃度汚染水と周辺の地下水との水位バランスが崩れ、汚染水が建屋外へ漏れ出しやすくなる。建設構想は原発事故直後にすでに浮上しながら、実現していなかった。 (清水祐樹)

 東電によると、建屋周囲の地下水位は海抜約四メートルで、建屋地下の高濃度汚染水を一メートル下の海抜三メートルに管理している。高低差を保てば、建屋外側の地下水圧が内側より高くなる。水は圧力が高い所から低い所へ流れるので、汚染水は外に出ないという理屈になる。

 だが、事故により損傷した建屋外壁のあちこちから、一日約四百トンの地下水が流れ込み、汚染水を増やしている。東電は敷地内にタンクを増設して保管しているが、自転車操業になっている。

 建屋周辺に遮水壁が完成すれば、確かに地下水の流入量は減り、汚染水の増加には歯止めをかけることはできる。しかし、遮水壁により周辺の地下水位が低下し、建屋内の汚染水位の方が高くなれば、今度は内外の水圧差が逆転し損傷場所から汚染水が逆流しかねない。汚染水を減らす切り札のはずの遮水壁が両刃(もろは)の剣となる形だ。

 六日の国会議員による会合でも東電は「建屋の陸側から地下水が来なくなると、建屋の汚染水が外に出てしまう」とし、今でも漏出リスクがあることを明かした。建屋内の水位を徐々に下げることなどを対策に挙げたが、それで防げるかどうかは明言しなかった。

 そもそも、国と東電は事故からわずか二カ月後の二〇一一年五月から遮水壁の建設を検討しながら、同年十月に見送りを決めていた。漏出リスクや費用、現場での作業の難しさが主な理由だった。国費投入が決まれば、費用については問題がなくなる。しかし、他の問題の解決策は具体化していない。


時事ドットコム
「凍土方式」で汚染水阻止=国費で支援、来年度予算計上へ-「東電任せ」転換

原子力災害対策本部会議であいさつする安倍晋三首相=7日午後、首相官邸
 政府は7日、東京電力福島第1原発の汚染水問題について、2014年度予算で国費を使って対策を取る方針を決めた。福島第1原発の敷地周囲の土を凍らせて地下水の流入を防ぐ「凍土方式」に関連する費用が中心となる見通し。8月末に締め切る来年度予算の概算要求に、経済産業省が関連費用を盛り込む方向で作業を進める。

〔写真特集〕最新 福島第1原発空撮

 安倍晋三首相は7日、首相官邸で開かれた原子力災害対策本部で、汚染水問題について「国民の関心が高い喫緊の課題だ。東電に任せるのではなく、国としてしっかり対策を講じていく」と述べ、茂木敏充経済産業相らに具体策の検討を指示。政府として対応する姿勢を強調した。
 「凍土方式」は、マイナス数十度の冷却液が循環する管を、建屋周囲を取り囲む形で少なくとも1.4キロメートルにわたり一定の間隔を置いて埋設。土を凍らせて地下水の流れをせき止める。政府と東電は、15年度前半の運用開始を目指している。(2013/08/07-19:01)

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