2013年9月25日水曜日

現実味を増す米国のデフォルト懸念 (ロイター)

ロイター
焦点:現実味を増す米国のデフォルト懸念
2013年 09月 25日 

[ワシントン 24日 ロイター] - 米国では政治の機能不全により、政府のデフォルト(債務不履行)という「考えられない」事態が実現するのではないかとの不安が増しつつある。

議会が連邦政府債務の法定上限引き上げを承認しないと、来月にもデフォルトが起きる可能性がある。議員らがそれが発生した場合にどう乗り切るかを公然と語っているという今の状況に、古株の政府関係者は驚きあきれている。

デフォルトが懸念されるのは、野党共和党が16兆7000億ドルの債務上限引き上げの交換条件として大幅な歳出削減を要求していることも理由の1つだ。これは福祉分野以外のあらゆる歳出が既に切り詰められている以上、実行には無理があるだろう。さらに踏み込むには、議会が年金や高齢者向け医療費などの極めて神聖な領域までも歳出を減らさなければならず、一部の議員はいかにも気乗りがしない様子を見せている。

投資家向けに政治分析を行うハミルトン・プレース・ストラテジーズのトニー・フラット氏は「各種の材料を総合して考えれば、(デフォルト回避の)合意が成立する可能性はどんどん低下している。厳しい選択肢しか存在しない」と指摘した。

こうした中で最近数日の議会における議論は、債務上限問題に集中する状況からは程遠い。むしろ月末で予算手当てがなくなる大半の政府機関を当面運営し続けるための法案を競って承認している。

本来ならばウォール街に信頼感を与えることが仕事の1つであるはずのルー財務長官さえ、連邦政府が債務返済能力を維持していけるかどうか不安な心情を吐露した。

長官は先週開催されたある企業フォーラムで「債務上限問題を瀬戸際に持っていきたいという(政治的な)欲求があることで、わたしは落ち着かない」と語った。

シンクタンクのバイパーティザン・ポリシー・センターのアナリストで共和党員であり、かつて上院予算委員会のディレクターを務めたスティーブ・ベル氏は、自身の40年に及ぶワシントン生活でデフォルトが起きるかもしれないとこれほど不安になったことはないと話す。

同センターは10月18日─11月5日の間に政府のデフォルトが始まると予想している。

<2011年より厳しい状況>

連邦債務上限が前回問題になった2011年にも、米国はデフォルト寸前の状況に陥り、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によるトリプルA格付けの引き下げにつながった。

当時は議会とホワイトハウスが今年から実施されている大幅な歳出削減で合意に達して危機を脱したが、社会保障年金やメディケア(高齢者向け公的医療保険制度)などのいわゆる「エンタイトルメント・プログラム」はほぼ手つかずだった。

しかしもはや簡単に減らせる支出はすべて減らしてしまった今回は、国庫が資金不足となる前に新たな財政引き締め合意にこぎ着けるのはずっと難しくなるだろう。

ベル氏は合意が形成されるかどうかについて「2011年よりも不安感は大きい」と述べた。

クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、米国の債務1000万ドルに対する向こう5年間の保証料は約2万8000ドルと、11年7月につけた過去最高の約6万3000ドルよりもまだずっと低い。

それでも一部の投資家はデフォルトリスクを再評価し始めている。世界最大級のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツを創設したレイ・ダリオ氏はリポートに「互いに相容れない意見の相違が強固になりつつあるので、議会と大統領は時間切れを迎える前に債務上限引き上げに関して合意に達しない可能性が高まっている」と記した。  

ルー財務長官の態度は、一貫してデフォルトは「考えられない」と主張していた2011年当時のガイトナー前財務長官とは好対照だ。

共和党議員の多くは、もし国庫資金が不足した場合は、他の支払い義務よりも債権者への返済を優先する計画を支持。ホワイトハウスはこうした計画には拒否権を発動すると言明している。

ワシントン政界のベテランによると、過去の世代の政治家ならばデフォルトの見通しについて真剣に検討することさえしなかっただろうという。

こうした情勢の変化はつまり、投資家がかつてまったく抱かなった不安を醸成させる。これまで何十年も、米国が支払い不能に陥ることなどあり得ず、債務が返済されないリスクはゼロだと考えられてきたのだ。

クリントン政権下で行政管理予算局(OMB)局長を務めたアリス・リブリン氏も、現在ほどデフォルトリスクが高まった局面は目にしたことがないと述べた。

リブリン氏は「数年前なら『馬鹿を言ってはいけない。もちろん債務上限は引き上げられる』と断言できたところだが、もはやだれもそんな風に言えなくなっている」と様変わりした事態を描写した。

(Jason Lange記者)

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