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靖国参拝 米主要紙はこう報じた
WEDGE 1月31日(金)12時33分配信
安倍総理の靖国参拝を受け、米主要各紙が社説を掲載しています。全体的に批判的な指摘がなされていますが、それは純粋な批判というよりも、中国と韓国に、自国の立場を正当化する口実を与えてしまったという文脈での批判です。
各紙社説の概要は以下の通りです。
12月26日付 Wall Street Journal紙
2006年以来、現職総理としては初となる安倍総理の靖国神社参拝は、日本の軍国主義の復活を口実に軍拡を進めてきた中国指導部への贈り物となった。
また今後は、中国国内での日系企業に対する暴動や不買運動に注意する必要がある。こうした反日運動は中国政府が裏で煽っている場合が多い。
他方、韓国は事情が違う。韓国は暴動よりも、外交的に冷たい態度をとることで、日本への敵意を示す可能性が高い。しかし、その結果、中国の覇権を阻止しうる米国の同盟国間の協力をより困難にしそうである。
志を同じくする国が、平和的かつ自由な地域秩序を推進できなくなることは、日本にとって戦略的負荷となる。
中国の脅威を前に、今後日本は、靖国の闇に染まっていない、新たな非宗教的な戦没者慰霊碑を作ることを検討せざるをえなくなるだろう。
12月28日付けWashington Post紙
安倍総理の靖国参拝は、彼の国際的立場と日本の安全保障を更に弱めそうな挑発的行為だった。
靖国神社には、戦犯だけでなく数百万人の日本の戦死者を祀る意味合いもある。それに、アメリカの大統領がアーリントン墓地を訪れるのに、旧敵国の目を気にしなければならないということは考えられない。しかし靖国は、中国や韓国等日本の侵略の犠牲者にとっては特別な意味を持つ。それは、日本の戦後指導者が慰安婦問題を含む犯罪や侵略の全ての責任を認めようとしないからでもある。
中国や北朝鮮の行動を見れば、安倍総理が様々な改革を行い、米国との防衛協力をより緊密化しようというのは当然のことである。だが今回の靖国参拝は、彼の政策と戦前の帝国主義へのノスタルジアを結び付けて見せてしまうものであり、安倍氏は自分で自分の首を絞めてしまっている。
中国は、靖国参拝を、防空識別圏設定に対する批判を反らすために使うであろう。韓国の朴大統領は、安倍氏と会わず、関係改善をしないという彼女の立場を補強することとなろう。
結果、オバマ政権は、沖縄基地問題で前進があったにもかかわらず、公的に安倍氏の行為を非難することを余儀なくされた。
安倍総理の行動は、地域で日本を孤立させ、米国との協力をより困難なものにしている。
12月26日付New York Times紙
安倍氏の究極的な目標は、占領期に米国が起草した平和憲法を改正することである。天皇陛下は、このことに難色を示している。安倍氏の靖国参拝の数日前、天皇陛下は80歳のお誕生日の談話の中で、「平和と民主主義という貴重な価値」を守った戦後憲法起草者へ深い感謝の念を述べている。
もし歴史が問題なのであれば、中国と韓国の指導者は東京を訪れ、安倍氏と会談し、問題解決のために交渉すべきである。それを拒否するのは、安倍氏に願望を成し遂げる許可を与えるようなものである。また、日本の軍事的冒険は、米国の支援によってのみ成り立つ。米国は、安倍氏のアジェンダが地域の国益にならないことを明確に伝えるべきである。アジアには国家間の信頼が必要であるが、安倍氏の行動は信頼を蝕むものである。
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安倍総理の靖国参拝について、現在の米国務省内にこのような批判的な論調があることは想像できましたが、上記3社説で注目すべきことは、Wall Street Journalも含めて米国ジャーナリズムが、国務省の立場に同調していることです。
このことは、日本が、第二次世界大戦の敗戦国としての負い目を今でも背負い続けていることを示すもので、日本としては、そうした国際環境のあることを認めざるを得ないということです。
他方、今回の靖国参拝が今後日本を取り巻く国際情勢、日本の外交にいかなる影響をもたらすかについては、ほとんど悪影響は無いと予想されます。
中韓との関係がこれ以上悪化するということは考えられません。中国では、今回を機会とする反日デモの申請は却下されていると言う事です。韓国では、日韓関係を何とか改善しようとしていた人々には挫折感を与えたかもしれませんが、もともと、そういう人々の影響力、そして彼らが何を達成し得たかは疑問でした。中韓両国が、これを機会に何か新しい措置を取ることは現状では予想されません。
日米間には、20年間の懸案である普天間移設の合意がほぼ出来つつあります。更に、半世紀来の懸案である、集団的自衛権の行使を前提とした、日米防衛ガイドラインの改訂が控えています。この両方が今回の靖国参拝の影響を受けることはまず無いと予想されます。
今後の日本の政策としては、むしろ、総理の靖国参拝を、春秋の例大祭参拝などによって、ビジネス・アズ・ユージュアルとして確立することでしょう。中曽根総理が9回靖国に参拝している間は、ロン・ヤス時代であり、小泉総理が5回参拝している間は、小泉・ブッシュの友好の時代であったことを考えれば、初めの1、2回は若干の摩擦はあっても、やがて慣例として問題にされなくなるのではないかと思います。
一見複雑な問題ですが、これを解決するには、ゴルディアン・ノットを断ち切るような措置が一番効果的であるのかもしれません。
岡崎研究所
甘い!
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