2014年5月6日火曜日

集団的自衛権行使容認の論拠 砂川判決援用に異論噴出 専門家「論点違う」/自民内から「無理筋」 (北海道新聞)

北海道新聞
集団的自衛権行使容認の論拠 砂川判決援用に異論噴出 専門家「論点違う」/自民内から「無理筋」(05/06 06:30)

 安倍晋三首相や自民党幹部が集団的自衛権の行使容認の論拠として、1959年の砂川事件の最高裁判決を盛んに強調している。同判決が行使を認めた「必要最小限」の自衛権に、集団的自衛権も含まれるという独自の論理を展開し、行使を認めていない現行の憲法解釈を変更するためだ。だが今の解釈が定まったのは、判決から22年を経た81年。判決を根拠に解釈を変更すれば、歴代の自民党政権の判断を否定することにもなり、党内からも「無理筋だ」との声が漏れる。

 「砂川判決は『自国の平和と安全を維持し、存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得る』と言っている。その措置の中に集団的自衛権があっても、排除されることはあり得ない」

 自民党の高村正彦副総裁は3日、NHKの番組で判決を引用し、現憲法下でも限定的な行使は可能だとの認識を強調。「砂川判決は最高裁が(自衛権についての見解を)示した唯一の判決だ。その範囲内であれば、解釈改憲も可能なのは法理的には当たり前だ」と強弁した。

 「憲法の番人」である最高裁が集団的自衛権の行使を認めていると主張することで、「時の政権が憲法解釈を変えるのはおかしい」という世論や野党の批判をかわし、慎重論の強い公明党との妥協点を探る狙いがある。政府も閣議決定に先立って策定する「政府方針」で、判決の一部を援用する方向だ。

 しかし、砂川事件は駐留米軍の合憲性が問われた事件で、集団的自衛権の行使の是非が争われたわけではない。一審で裁判官を務めた松本一郎・独協大名誉教授(83)は「当時は自衛権と言えば、個別的自衛権のことだった。あの判決に集団的自衛権の根拠を求めるのは、言いがかりもはなはだしい」と言い切る。

 自民党の派閥領袖(りょうしゅう)も、限定容認論自体は支持しつつ「砂川判決を持ち出すのは無理がある」と本音を漏らす。

 最高裁が昨年9月、結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続に関する民法の差別規定を違憲と判断した際、自民党の保守系議員は「司法の暴走だ」と猛反発し、最高裁を真っ向から批判した。その自民党が今、最高裁判決を盾に行使容認を急いでいる。(東京報道 小林宏彰)<北海道新聞5月6日朝刊掲載>

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