10月31日、日銀は市場の意表を突く追加緩和に出た。
国債の買い入れをこれまでの年50兆円から80兆円に増やし、上場投資信託と上場不動産投資信託も増額する。
当日の記者会見で、黒田東彦・日銀総裁は「デフレ脱却への正念場」と言い、早期に2%のインフレ目標に到達できるよう、「必要かつ十分」な手を打った、と説明した。
思えば昨年春、日銀が異次元緩和を打ち出した際にも「必要かつ十分」な対策と説明し、2年で2%のインプレ達成を「確信している」として追加策は不要と説明してきた。
ところが、異次元緩和をもってしても、景気はこのところ悪化し、円安が進まないとインフレ率がずるずると低下する事態となった。
円安でも輸出や生産が増えない誤算に加え、消費税と円安で物価が上昇したために実質賃金が減り、消費を減らさざるを得なくなったためだ。
異次元緩和は想定した効果をもたらさなかったのだ。
そこへ同様の量的緩和を追加しても、結果は同じこと。
市場のサプライズが収まり、賞味期限が切れれば、また追加が必要になる。
黒田総裁が嫌っている「政策の逐次投入」にならざるを得ない。
円安と株価上昇で一部の企業と資産家は潤ったが、政府・日銀が言うところの「トリクルダウン」、つまり庶民への「おこぼれ」がなく、多くの国民はむしろ生活が苦しくなった。
所得格差の拡大が経済を圧迫することは、欧米では共通の認識になっている。
効果が確認できず、副作用のある政策を追加する前に、なぜ所期の効果が上がらなかったのかを検証するのが先ではないか。
日銀の信認こそ「正念場」を迎えていることになる。 (千)
「金融政策の限界」(『朝日新聞』2014-11-07経済気象台)
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