2015年7月1日水曜日

新国立「無謀」 JSC、1年前に認識 計画修正できず (東京新聞) : 日本スポーツ振興センター(JSC)内では少なくとも昨年春の時点で・・・。幹部らは計画の無謀さを認めつつ、「われわれは計画の推進が責務。それ以外の行動は取れない」と吐露したという。

東京新聞
新国立「無謀」 JSC、1年前に認識 計画修正できず
2015年6月29日 07時31分

 新国立競技場(東京都新宿区)の建設問題で、文部科学省から事業を任された日本スポーツ振興センター(JSC)内では少なくとも昨年春の時点で、計画が行き詰まりをみせていたことが、関係者への取材で分かった。下村博文文科相は今年五月に初めて、コストや工期が予定を大幅に超える恐れがあると認めたが、関係者の証言からは、JSCが早くから計画の無謀さに気付きながら軌道修正できなかった様子が浮かぶ。 (森本智之)

 「文科省も有識者会議も助けてくれない」「日本の設計事務所は能力が低いのでしょうか」。昨年春、東京都内のJSC本部に呼ばれた建築関係者に、複数の幹部職員が弱り切った様子で切り出した。

 総工費千三百億円で始まった計画は、英国の建築家ザハ・ハディド氏の基本デザインがコスト増を招き、二〇一三年十月の試算で三千億円に膨脹。JSCは規模を縮小して基本設計をまとめていたが、昨年三月の公表予定は既に過ぎていた。

 JSCを所管する文科省からも、建築家の安藤忠雄氏らがメンバーを務める諮問機関の有識者会議からも、具体的なアドバイスはもらえていなかった。一方で建築界からは槇文彦氏をはじめ、巨大すぎる計画に批判が上がっていた。

 「何が正しい情報か分からなくなってきた。正しいことを教えてほしい」。すがるように求める幹部らに、技術的な問題点などを指摘すると、幹部らは計画の無謀さを認めつつ、「われわれは計画の推進が責務。それ以外の行動は取れない」と吐露したという。

 この関係者は「JSCは失敗のツケを自分たちが払わされている、と感じているようだった」と振り返る。

 計画の無謀さは、設計手法からもうかがえる。一般的には設計ができてから、それに基づいて入札で施工業者を決める。新国立では設計段階からゼネコンが参加することになり、昨年秋に大成建設と竹中工務店が入札で選ばれた。

 理由は「難工事のためゼネコンの高い技術力が必要だった」(JSC)からだが、ある幹部は「設計後だと、工事が難しすぎてゼネコンに逃げられるかもしれない。先に巻き込んでおきたかった」と明かす。

 文科省とJSCは今月、当初見込みの倍近い二千五百二十億円で契約する方針を決めた。一九年九月のラグビー・ワールドカップに間に合わせるには、工期もぎりぎり。しわ寄せは今、ゼネコンに及ぶ。関係者は「現場はすごくピリピリしている。『俺たちは尻ぬぐいをやらされている』と憤る人もいる」と話す。

 ハディド氏のデザインを選んだコンペの審査委員長を務めるなど、計画の中心にいた安藤氏は沈黙を守っている。だが、表向き全員一致で決めたはずのコンペの別の関係者は昨年、計画に反対する建築家にこう漏らしたという。「この計画は間違っている。つぶしてほしい」

 <日本スポーツ振興センター(JSC)> 文部科学省所管の独立行政法人。秩父宮ラグビー場などの体育施設のほか、トップ選手の競技力向上を支援するナショナルトレーニングセンターを運営。Jリーグの試合結果を予想するスポーツ振興くじ(toto)も担う。
(東京新聞)

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