2012年10月14日日曜日

福島県内自治体の除染 計画の1.1%が終っただけで、ごみ袋26万袋が置いたままになっている

NHK
除染の土など ごみ袋で26万袋余に
10月11日 18時38分

除染の際に出る放射性物質で汚染された土などを、敷地内に置いたままになっている住宅や事業所が、福島県内におよそ1500か所あり、その量は、家庭用の一般的なごみ袋に換算した場合、26万袋分余りに上ることがNHKのまとめで分かりました。
除染が本格化すれば一般家庭での保管が大幅に増える見通しで、中間貯蔵施設など保管場所の確保が大きな課題となっています。

原発事故の影響で除染をみずから実施する福島県内の41の自治体にNHKが取材したところ、これまでに除染が終わった住宅や事業所は、自治体が作る計画全体の1.1%のおよそ4600か所でした。
このうち、除染で出た廃棄物を敷地内に置いたままになっているところが、都市部の自治体を中心におよそ1500か所あることが分かりました。
廃棄物は大型の土のうに入れたり、箱形の容器に入れたりさまざまな方法で保管されています。
各自治体に具体的な保管方法を尋ねて、NHKが独自に集計した結果、その量は、45リットルのごみ袋に換算した場合、26万袋分余りに上っています。
このうち福島市では、最も多いおよそ1100か所で敷地内での保管が行われていて、その数は、1トン入りの土のうがおよそ3700袋、45リットルの容器が3万6000個余りに達しています。
この背景には、原発周辺の双葉郡内に設置が計画されている廃棄物の中間貯蔵施設の建設のめどが立っていないうえ、施設が完成するまでの間、地域ごとに保管する仮置き場も十分に確保できていないことがあります。
環境省は、一般家庭で保管する場合も建物から1メートル以上離して、土のうなどで放射線を遮蔽し、防水シートで覆えば、住民や周囲への影響を減らせるとしていますが、汚染廃棄物の安全管理が個人に委ねられた形となっています。
住宅の除染が今後、本格化すれば同じ様なケースが大幅に増える見通しで、安全な保管場所の確保が大きな課題となっています。

郡山市では
人口32万人余りの郡山市では、今後5年間でおよそ10万戸に上る住宅の除染を行う計画です。
これまでに、中心部に近い池ノ台地区のおよそ140戸の住宅で先行的に除染を終えました。
しかし、郡山市でも仮置き場がまだ整備されていないため、この地区だけで、除染に伴う廃棄物およそ390立方メートルが庭先などに置かれたり埋められたりしています。
このうち浜田剛二さん(67)の家では、先月の除染で出た土などが200リットルの容器7つ分、家庭菜園のキウイの木の下に保管されています。
除染を進めるためにはやむをえないと考え、庭先での保管を受け入れました。
容器は放射線を遮蔽するためにコンクリート製の筒がはめられ、雨水が入り込まないようシートをかぶせています。
しかし、廃棄物の重さで木の根が傷むおそれがあるほか、放射線の影響がないのか不安が拭いきれず、浜田さんの家族は家庭菜園で作ったものを食べなくなったといいます。
浜田さんは「放射線が出ているのか、どのような影響があるのか私たち個人は専門家ではないので分からない。本当は置いておきたくはないが、除染を進めるうえではしかたがないという諦めの気持ちがある。しかしいつまでも庭に置きたくはないので、仮置き場などを整備して1日も早く処分できるようにしてほしい」と話しています。
除染を担当する郡山市原子力災害対策直轄室の山口勇主幹は「今後、住宅の除染が増えていくが、土地がなくて仮置き場の設置が進んでおらず住宅の敷地に保管することを続けていかざるをえない。住宅の敷地内への保管は本来であれば望ましいことではないので、市としても安全な管理が行われているか見回りを行いたい。国にも中間貯蔵施設の建設を急ぐよう要望を行い1日も早く施設に移せるようにしたい」と話しています。

各地の除染の現状と課題
原発事故で広がった放射性物質を取り除く除染は、住民の帰還や復興に欠かせない作業で、除染が必要な地域は福島県をはじめ東北や関東の広い範囲に及んでいます。
このうち、原発周辺の福島県の11市町村の避難区域については、国が直轄で除染することになっていて、ことし7月から田村市や楢葉町など、比較的、放射線量の低い地域で、作業が進められています。
一方、避難区域以外で1時間の放射線量が0.23マイクロシーベルト以上の地域を含む福島県の自治体のほか、岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の合わせて8つの県の104の市町村では、国が費用を負担して自治体がみずから除染を行う地域として国から指定されています。
環境省によりますと、このうち、95の市町村は除染作業を始めたり除染に向けた準備を進めたりしています。
国は福島県では除染で出た土を県内の地域ごとに設ける仮置き場に3年ほど保管したうえで、中間貯蔵施設に運び、30年以内に県外で最終処分したい方針です。
しかし、地元との調整が難航し、めどは立っていません。
さらに除染が始まった福島県以外の自治体でも仮置き場の設置が進まず、その多くで、除染を行った住宅や施設などの現場に土を保管したままの状態となっています。
除染で出た土について福島県以外の自治体では、みずからで再生利用したり最終的な処分場所を確保したりすることが求められています。
しかし、国からは処分方法を決めるうえでの具体的な放射線量の基準などが示されていないことなどから最終的な処分方法が決まっていない自治体が多く、住民の間からは「仮置き場がそのまま最終処分場になってしまうのではないか」という不安の声も出ています。
環境省は「福島では、中間貯蔵施設の設置に向けて地元の理解を得られるよう調整を急ぎたい。また、福島以外の自治体でも保管場所を確保できるよう住民に対する説明会に出向くなどして協力していきたい」と話しています。

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