2013年7月3日水曜日

[日本大使館も盗聴] 底なしの米の通信傍受(沖縄タイムス社説) 



沖縄タイムス社説
[日本大使館も盗聴]底なしの米の通信傍受
2013年7月2日 09時15分 (26時間58分前に更新)

 米国家安全保障局(NSA)による通信傍受は、電子メールなどインターネット上の個人情報の大量収集にとどまらず、在米日本大使館など外国の政府機関も監視対象としていたことが分かった。

 個人のプライバシーや通信の秘密の侵害だけでなく、国家機密にもアクセスしている可能性が出てきた。対テロ対策を口実にした米国の諜報(ちょうほう)活動は底なし沼の様相だ。

 菅義偉官房長官は記者会見で「外交ルートを通じて、しかるべき確認を求めている」と話しているが、当然である。日米は同盟関係にある。米国は何の情報を、何のために収集していたのか、日本政府は毅然(きぜん)とした態度で米当局にただしてもらいたい。

 英紙ガーディアンによると、監視対象にはフランスやイタリアなどの欧州連合(EU)諸国、メキシコ、韓国、インドなど38大使館も含まれている。EU代表部については約90人の職員を監視し、パソコン内のデータ全てを盗み見していたとみられる。

 ドイツの週刊誌シュピーゲルは、ガーディアンの報道に加え、EU代表部の施設などに小型盗聴器を仕掛けていたと報じている。

 欧州議会の議長は「事実ならEUと米国の関係は大きく損なわれる」と非難した。

 いずれの情報源も米中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデン容疑者=スパイ活動取締法違反容疑で訴追。元職員がNSAによる通信傍受を内部告発、提供されたNSAの機密文書から明らかになった。

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 スノーデン元職員が属していたCIAやNSAは沖縄とも関係が深い。CIAは復帰前、旧玉城村や読谷村を拠点に活動していた。

 本紙が発掘した米公文書によると、諜報や秘密工作、心理作戦などを行う際はCIAとは別の暗号名を名乗ることを指示されていた。徹底した隠密行動ぶりがうかがえる。

 CIAの秘密資金は沖縄でも使われた。復帰前の1965年、三大選挙の一つ、立法院選挙で親米派を支援するため100万ドルを超える巨額の資金が動いたのは有名だ。

 復帰後も、読谷村には極東一帯の電波を傍受することが可能な楚辺通信所(通称・象のオリ)があり、NSAが日本政府の情報を傍受していたといわれている。

 楚辺通信所は米軍キャンプ・ハンセンに移設され、返還されたが新しい施設でどういう活動をしているのか闇に包まれたままだ。

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 英政府の通信傍受機関、政府通信本部(GCHQ)が2009年にロンドンで開かれた20カ国・地域(G20)の首脳会合などで各代表団の電話や電子メールを傍受。偽のインターネットカフェも設置する念の入れようだった。

 GCHQはNSAの姉妹機関といわれ、スノーデン元職員から入手した資料を基に、ガーディアンが報道した。

 米国は自由の国を標榜(ひょうぼう)している。今回、明らかになった情報収集の在り方は自由の国の姿からは程遠い。米国は、関係国に説明責任を果たさなければ自由の国が泣くことを肝に銘じるべきだ。

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