2013年8月14日水曜日

被災者に寄り添う 脚本家倉本聰さんに聞く (福島民報) 「福島の人々の苦しみは解消されていないのに、あたかも解消されたかのように忘れ去られている。その苦しみは体の芯の奥にたまっていっているのではないか。」

福島民報
被災者に寄り添う 脚本家倉本聰さんに聞く

 東京電力福島第一原発事故の避難区域を舞台にした、脚本家倉本聰さんの新作劇「夜想曲-ノクターン」は、10日から12日まで北海道富良野市の「富良野演劇工場」で上演された。倉本さんは福島民報社のインタビューに応じ、創作を通して今後も被災地に寄り添っていく決意を示した。

 -新作の公開を終えた今の気持ちを聞かせてほしい。
 「(原発事故がテーマで)芝居として重すぎたかもしれないという気持ちはあるが、起きた事態が重いのであって、その『重さ』はどうしても必要だった。世間一般のテレビ番組が空疎なものになっている中で、こういう問題は捨ててはいけない。風化を止めたい」

 -被災地の現状をどう捉えているか。
 「どんどん『沈殿』しているという感じがする。福島の人々の苦しみは解消されていないのに、あたかも解消されたかのように忘れ去られている。その苦しみは体の芯の奥にたまっていっているのではないか。福島の新聞と中央紙を見比べてみると、特に温度差を感じてしまう」

 -原発事故を語り継ぐという部分で創作、フィクションの世界が担うべき役割は何か。
 「ドキュメンタリーは事実だけを突き付ける。それに対し、フィクションというのは、薬の『苦さ』を『おいしいもの』で隠しながら利かせていくものだ。僕の思いを役者に伝える形で発信していきたい。被災者の声なき声を作品の中で語らせていく。関わり続ける」

 -今後の活動の予定は。
 「今回の災害は地震と津波という自然の営みの部分と、原発事故という人災の部分の、両面がある。天災と人災は一緒にしてはいけない。(題材として取り上げ続けるのは)ライフワークだと思っている。できることはある。大事なことは寄り添うこと。どう寄り添えばいいか、そのことを一番に考えていきたい」

■再来年に被災地での上演を計画

 「夜想曲-ノクターン」は、南相馬市周辺をイメージした作品で、津波で2人の娘を失った男性が避難区域で生活を続ける彫刻家の女性と出会う場面から始まる。互いの体験を話すうち、女性が作ったピエロの彫刻が県民の思いを代弁するかのように語り出す。南相馬市の詩人若松丈太郎さんの詩も引用している。
 再来年に被災地での上演を計画している。

( 2013/08/13 09:04 カテゴリー:主要  )

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